第二章
[8]前話
苦しそうにしている女子生徒がいるとすぐに言った。
「見学しておくんだ」
「そうしていいですか?」
「無理は禁物だからな」
優しい笑顔で告げた。
「だからな」
「見学していいですか」
「そうだ、辛い時は本当にな」
生理か等とは聞かずに言うのだった。
「休むんだ」
「今日はプールでもですね」
「プールでも何でもだ」
そうしたことは関係なくというのだ。
「無理はしないでな」
「そうしてですか」
「休むんだ、いいな」
「それじゃあ」
苦しそうにしていた女子生徒は頷いてだった。
見学した、そしてだった。
その話を聞いた千夏は中学の時よりも十五センチは背が伸びた兄に言った。彼女は五センチ位大きくなっている。
「私が言ったこと覚えてるわね」
「ああ、女の子は生理があってな」
「それで生理痛があってね」
「物凄く痛くてな」
「辛いのよ」
「しんどいってことだな」
「だからね」
それでというのだ。
「体育だってね」
「無理だよな」
「これには個人差があるけれど」
それでもというのだ。
「辛いことは誰でもよ」
「そのことは気遣わないとな」
「そう、ただ言ったらね」
「それも駄目だな」
「そうよ、そこもしっかりしてね」
「デリカシーだな」
総一郎は千夏に答えた。
「やっぱり」
「そう、だからね」
「しっかり守らないとな」
「そのこともね、そうしたことを踏まえながらね」
「これからも生徒に教えていくな、体育の教師だしな俺は」
総一郎は自分の仕事のことも話した。
「ちゃんと頭に入れて生徒に教えていくな」
「そこはしっかりとね」
「やっていくな」
OLをしている妹に約束した、そうして実際に男は身体ではわからないことをしっかりと頭に入れて気遣いもして教えていった。男子生徒にもその気遣いは出て彼は生徒達から慕われる先生となった。そこにあるのは中学生の時に妹に言われたことがはじまりであった。
男性にはわからない 完
2022・1・25
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