第二章
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「項羽と劉邦の」
「劉邦よね」
「中国の皇帝だった」
「あの人ね」
「劉邦って言ったら物凄く魅力があってな」
二人共勉強は得意でなくあまりレベルの高くない地元の高校を出てすぐに働いている、小説はあまり読まないが料理や酒の勉強は店の為に熱心で。
その中で歴史上の酒好きとして劉邦のことは知っていた、それで二人は劉邦のことを今話せているのだ。
「もうそれでな」
「皇帝になれたわね」
「そうした人だよな」
「そう、それで自分を赤龍の化身と言っていて」
「それが何故かっていうとな」
「左股にね」
まさにそこにであるのだ。
「七十二の黒子があったからよ」
「そうだったな」
「それで私もね」
「劉邦と同じか」
「ええ、だからみたいよ」
映見は真剣な顔で話した。
「お店に私がいるからって人が来て」
「子供の頃から周りに人が集まるんだな」
「そうなのよ、言い寄る人がいないのは」
「劉邦は慕う人でな」
「本人が女の人に声をかけたけれど」
劉邦は女好きとしても有名だ、旗揚げまでは只の酒好きの女好きの怠け者で大法螺吹きであった。ただそれでも人は自然と集まったのだ。
「言い寄る人は権勢がないとね」
「なかったな」
「だからみたいよ」
「お前は人に慕われてか」
「言い寄られないのよ」
「そうなんだな、そうかお前は劉邦なんだな」
「そうね、ただ私はお店のおかみさんだから」
映見は正寅に笑って話した。
「皇帝にはならないわ」
「それはないか」
「ずっとここにいていいわよね」
「当たり前だろ、お前は俺の女房だぞ」
正寅も笑った、大きく口を開いて。
「だったらな」
「じゃあこれからもね」
「宜しく頼むな」
「それじゃあね」
「ああ、これからも宜しくな」
妻に笑顔で言った、ただこのすぐ後だった。
彼も妻の黒子の数を調べた、ズボンを脱いでもらって数えると実際に七十二あった。それで彼も頷いたのだった。
店は繁盛し続けた、そうでない日は一日もなかった。映見がいるとそれだけで店はそうなっていた。そして二人の息子も左股に七十二の黒子があり店の繁盛は続いた。
女赤龍 完
2022・1・24
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