第二章
[8]前話
「土橋に今読んでて学校に持って来てる小説ですね」
「鍵と言ったな」
「谷崎潤一郎ですね」
「それだ」
オベールはまさにと答えた。
「谷崎の作品はかなり危険だ」
「純文学ですよ」
「純文学でもだ、サド侯爵の話もしたな」
「しましたよ」
泉田はこのことも正直に答えた。
「それが何か」
「谷崎もサド侯爵も猥褻と言っていい、むしろ下手なそうした小説や漫画よりもな」
「そうですか?」
「君はまだ鍵は読んでいないか」
「今から読むところです」
「なら学校では読まないことだ、家でだ」
読むならというのだ。
「いいな、そして今後学校では彼等の作品は持ち込まないことだ」
「そのことを言う為に俺をここに読んだんですか」
「そうだ、いいな」
こう言ってだった。
オベールは泉田に谷崎の小説を学校では読ませなかった、サド侯爵の作品もだった。そしてだった。
谷崎のその作品、鍵を家で読んだ。それから学校で土橋に話した。
「凄かったぜ、下手なエロ本よりもな」
「際どかったか」
「某フランス書院顔負けでな」
そこまでというのだ。
「際どかったぜ」
「そうなんだな」
「先生が止めるのも当然だよ」
「サド侯爵もか」
「昨日の朝内容知らないで名前だけ出したけれどな」
「調べるとか」
「凄かったぜ、学校じゃとても読めないな」
こう話すのだった。
「純文学でも中には下手なエロ本よりもな」
「凄い内容の作品があるんだな」
「そうだよ、それがわかったよ」
「それで先生にも注意されたこともか」
「ああ、何をしたのかわからなかったけどな」
その時はというのだ。
「今はな」
「わかったか」
「あれは駄目だ」
谷崎のその作品はというのだ。
「サド侯爵はもっとな、あと永井荷風もな」
「その作家もか」
「エマニエルとかチャタレイとかいう作品もな」
「某フランス書院よりもか」
「くる、だからもう二度とな」
泉田は真顔で述べた。
「そうした作品は学校で読まないな」
「家で読む」
こう言って彼は二度とそうした本を学校に持って行くことはしなかった、家で読むことにした。純文学といえどかなり際どい内容の作品があることを知ったので。
下手なエロ本よりやばい 完
2022・1・20
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