第二章
[8]前話
「それならな」
「私はこれまで子供が出来たことはないわ」
「そうだな、しかしな」
「それでもなのね」
「三人がそう言うならな」
「それならなのね」
「いいだろう、お前は嫌か」
「嫌かって言われると」
喜久子は自分の心に聞いた、そうしてから兄に答えた。
「嬉しいわ」
「そうだな」
「血はつながっていないから申し訳ないと思っても」
「親子は絆だろ」
「絆なの」
「自分達の実の子を邪険にする親もいるだろ」
所謂毒親のことも話した。
「そうだな」
「酷い人達もいるわね」
「そんな人達と比べたらな」
それこそというのだ。
「お前は立派な親だ、だからな」
「親としてなのね」
「受け入れたらいいんだ」
三人の言葉をというのだ。
「いいな」
「兄さんもそこまで言うなら。主人も喜んでるし」
喜久子の夫もだ、三人に喜久子がそう言われて喜んでいる。自分は兎も角彼女に娘が出来てよかったと。
「それじゃあね」
「ああ、お前は三人のお母さんだ」
「あの娘達の気持ちに応えるわ」
確かな声で頷いてだった。
喜久子は三人にこれまで以上に愛情を以て接した、そして。
三人はやがて学校を卒業して就職してだった。
それぞれ結婚して家庭を持った、そのうえで子供達をもうけたが。
「お祖母ちゃんよ」
「あんた達も挨拶しなさいね」
「お祖母ちゃんに宜しくね」
三人はいつもそれぞれの子供達を連れて喜久子のところに来た、そして子供達に喜久子を祖母と呼んで挨拶をしてだった。
愛情を以て接して大事にする様に言った、喜久子はそんな彼女達を見て自然と優しい笑顔になった。
「私はいい娘を三人も持ったのね」
「それは私達の台詞よ」
「いつも大事にしてもらったでしょ」
「私達はいいお母さんを持ったわ」
三人はその喜久子ににこりとして返した。
「だから子供達にもよ」
「お祖母ちゃんって言ってるの」
「そうなのよ」
「そうなのね、ただ一言言わせてもらうわ」
喜久子は三人の心に触れて嬉しさのあまり涙を流しそうになって話した。
「有り難う」
「お礼なんていいの」
「私達の方が言いたい位よ」
「本当に大事にしてもらったから」
「だから今度は私達の番よ」
「精一杯親孝行させてもらうわね」
「そうさせてもらうわね」
三人はその喜久子にこう返して実際にだった。
娘として親孝行していった、その光景はまさに親子のものだった。例え血はつながっていなくともそうだった。
お母さんになってくれた人 完
2022・1・20
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