第二部 1978年
ミンスクへ
下命 その2
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今の僕達は、奴等から狙われている。
あの悪名高い野獣が見逃してくれるとは思えない」
無論、奴等とは国家保安省の事で、野獣とはアスクマン少佐の事である
彼が理解しているであろう事を考え、あえて説明しなかった
「あいつ等、この国をソ連の様な専制国家に変えたいのか。
スターリンが築いた《収容所群島》を、民主共和国で実現させる心算なら……」
彼は口ごもる
幾ら、屋外で盗聴の危険性は低くなったとはいえ、何処かに間者が潜んでいるかもしれない
自分一人なら、どうでも良い。
妹である、あの聡明なアイリスディナーの事を案じると、そら恐ろしくなってしまう
唯一の愛しい家族であるのだから……
次第に日が傾き、風が強くなってくる
勤務服の上から着て居る外套に突き刺さる様な寒さ
足早に、宿営地に戻る
夜間に為れば、現地では賊徒が闊歩し、危険
戦地と言う事で、内務省軍(MVD直属の武装組織)も警察も引き上げてしまった
宿営地では、小銃に着剣し、ヘルメットを被った歩哨を立てている
だが、ライフルでの狙撃や、仕掛け爆弾に数度、遭遇した
幸い、人的被害はなかったものの、この地の反独感情の根深さを感じる
或いは、ソ連支援の為に来た外征軍を、体制維持の先兵として、土民(現地住民)は見ているのかもしれない
宿営地に近づくと、門のところに、一人の男が立って待っているのが見える
防寒帽を被り、羊皮の別襟を付けた外套を着て、腰には拳銃嚢を下げたベルト
両腕を腰に当て、周囲を見張っていた
門から数メートル先の歩哨は、自動小銃に弾倉を付け、直立している
門に近づくなり、声が飛んだ
「同志中尉、遅かったではないか」
声の主は、シュトラハヴィッツ少将
一番帰りが遅かった将校の二人を窘める為に来ていたのだ
「同志将軍、少しばかり、話し込んでしまいました」
ベルンハルトは彼に歩み寄っていった
彼に向けて謝罪の言葉を伝える
彼は厳しい顔つきになると、二人に忠告した
「狙撃手は待ってくれんぞ。
奴等は、隙があれば撃ってくる。
今度出歩くときは、小銃か、機関銃ぐらい持って行け。
どんな服装をしても狙われるから、勤務服でも構わん。
連中は、軍人だと分かれば仕掛けて来る」
ベルンハルトは、彼の方を向く
「ソ連では戦術機も狙われると聞きます。
紐や針金に巻き付けた仕掛け爆弾で。
何か、刃物でも付ける対策でもせねば、ならぬでしょう」
彼は、思い出すかのように考える
「ソ連では、先んじて戦術機に炭素複合材の刀身を備え付けている。
ただ、その因で、頗る整備性が落ちたと聞き及んでいる。
戦術機に、高性能アンテナを付けた君だ。
何か、考えているんだろ」
中尉は考え込んだ末、一つ
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