第二部 1978年
ミンスクへ
下命 その2
[1/3]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
1978年2月、再びウクライナ派遣が下令された
第一戦車軍団ばかりでは無く、ベルンハルト中尉が所属する第40戦術機実験中隊も同様の命が下る
彼等は、寒風吹きすさぶハリコフに向かった
東部ウクライナの要衝である、この地は嘗て独ソ両軍が4度に渡って干戈を交えた場所
冬季は平均気温が氷点下10度近くに下がり、寒さも身に染みる
静かに息を吐く
寒さで肺の中まで清められるような空気
市内を眺めると、まるで墓標のようなビル群が立ち並ぶ
BETA戦争が始まる前は、この街は学校や研究施設がある静かな町であったことを思い出す
わずか数年前の事とは言え、酷く昔に感じる
耳付きの防寒帽を被り、将校外套を着て脇を歩くヤウクは、ずっと黙ったままだった
「なあ、あの話は本当なのか」
彼はヤウクに問うた
ヤウクは周囲を見回した後、囁く様に言った
「本当さ。
ハンニバル大尉には、家族が有ったというべきかな……
今は、奥さんと息子さん二人と、週末だけ家庭生活を送る暮らしをしているらしい。
なんでも、僕の聞いた話だと、奥さんの従兄弟が色々な所に出入りして保安省に目を付けられているそうだ。
だから別居生活をして、大尉を庇う様な暮らしをなさっていると聞いている」
彼は、ヤウクの方を静かに振り向く
曇模様で、路面に降り積もった雪の寒さを強く感じる
「だからといって若い娘と付き合うのはおかしくないか……」
ヤウクは立ち止まって、彼の方を向く
「彼女の方から誘ったらしい事は、大尉から伺っている。
好き合った彼氏と、喧嘩別れしたそうだ。
彼の進路に関する事で反対したら、別れを切り出されて……」
彼の目を見つめる
「聞いて思ったよ。
まるで君達みたいじゃないか。
ベアトリクスの入学を最後まで反対したのは、君だろう。
君は、あの後怒って、暫く会わなかったそうじゃないか。
思い詰て、過激な手段に出るかもしれない……」
彼は静かに問うた
「どういう意味だ」
肩を竦めて、おどける
「何、言葉の通りだよ。
君のやり方では時間が掛かるとか言って、保安省や党中央に近づくかもしれない。
表現出来ない様な才色兼備と聞く
その様な才媛を、連中が放っておくと思う?
狙われたんだろう。
一度で、済むとは思えない……」
強い口調で問いかける
「何が言いたい……」
暫しの沈黙の後、ヤウク少尉は語った
「君が守ってやる様な姿勢や理解する行動をしない限り、彼女から見捨てられるかもしれないってことさ」
顔が紅葉し、革手袋をした拳が握りしめられる
「貴様、言わせて置けば……」
ヤウクは、彼の興奮を余所に、話し続けた
「どちらにしても、
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ