五十六 逃げ水
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その日、火ノ国木ノ葉隠れの里付近で、爆発が二度、起きた。
ひとつは木々が点々と疎らに並ぶ荒野にて。
ひとつは奈良一族以外の立ち入りを禁じられている森の中で。
だが、双方の爆発付近にいた者は皆、爆発は一度きりだと思い込んでいる。
己のすぐ傍で起きた爆発のほうに気を取られ、もうひとつの爆発に気づきもしない。
ふたつの爆発がほぼ同時刻に起きた事実を知っているのは、爆発を起こした張本人。
タイミングを合わせ、もうひとつの爆発に注意が向かないように仕向けた犯人は、素知らぬ顔でそれぞれの陣営と対峙していた。
片や、角都と闘っていたカカシとヤマト。
片や、飛段と闘っていたシカマル、そして加勢しに合流したばかりのいのとチョウジ。
場所は違えど、彼らが対峙しているのは、フードを目深に被った得体の知れぬ存在。
『暁』らしき装束こそ着ていないものの、敵の肩を持つところから木ノ葉の忍びとは相容れぬ相手だという事だけが、遠く離れた場所にいる彼らの共通の認識だった。
見事なまでに晴れ渡った空の下、不釣り合いな得物が鈍く光った。
死神が持つに相応しい真っ赤な刃の鎌。
それを手の中で弄ぶ不死者もまた、『暁』の証である黒の装束と相俟って、より一層、死神らしく見えた。
頭上に広がるのは、想い人と同じ瞳の色に似た青天白日と呼べる空。
しかしながら、穏やかな気候の反面、その場には緊張感が張り詰めている。
天候に似つかわしくない死神の鎌を弄ぶ憎き仇を、シカマルは睨み据えた。
埋葬させたはずの男が生きている。
アスマを殺した犯人をみすみす逃すものか。
しかしながら、その隣に佇む存在がシカマルの意気込みと決意を尻込みさせる。
死神を墓穴から蘇らせたその人物こそが、彼には飛段以上の危険人物に思えた。
角都から引き離し、奈良一族だけが出入りを許される森の地中深く、飛段を埋める。
いくら死なないと言って、不死者だとて、生き埋めにされれば手も足も出ない。
ここまではシカマルの采配通り。
けれどその計画は、今現在、飛段の隣に佇む人物によって台無しにされた。
白いフードを目深に被った存在。
あの時、五代目火影の命令により、飛段と角都に初めて邂逅した折に姿を見せた謎の人物と同一人物だろう、とシカマルの頭脳は即座に答えを導き出す。
突如現れた白フードに動転するチョウジといのを横目に、シカマルは己の目論見を頓挫させた相手の動きを注意深く観察していた。
だが、飛段の無事な姿を目の当たりにして、チョウジの頭に血が上る。
「あ、アスマ先生の仇…ッ」
「…っ、待て、チョウジ!」
【肉弾針戦車】で飛段を圧し潰そうと攻撃を仕掛けるチョウジに慌てて、シ
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