五十六 逃げ水
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の質問は自分から、という意味ではない。
木ノ葉隠れの忍び全てから、木ノ葉隠れの里から、火ノ国から逃げられるのか、という意味合いの言葉だった。
シカマルの質問の意図を正しく理解して、ナルトは口許に弧を描く。
いきり立つ飛段を視線だけで制した後、彼はシカマルと向き合った。
目深に被ったフードの陰から覗き見える、色さえ判別できない双眸に見据えられ、シカマルの身体が強張る。
まるで何もかもを見透かされているかのような、覗き込まれているかのような、奇妙な心地になる。
同時に、どこか既視感を覚えた。
いつか、どこかで、同じような瞳に真っ直ぐと射抜かれたかのような、そんな気がする。
不意に、バチン、とまるで静電気が起こったかのように影が弾かれた。
術を解いたつもりはない。
自身のチャクラはもう切れかけているが、チャクラ刀は依然として【影真似の術】の効力が発揮されていた。
だが実際に、地面に相手の影を縫い止めていたチャクラ刀がいつの間にか、相手の手の内にある。
影を射抜かれ、自由を奪っていたチャクラ刀を物珍しげに手の上で弄ぶ白フードを目の当たりにし、シカマルは愕然と立ち尽くした。
まるで己自身が【影真似の術】を掛けられたかのように身体が硬直してしまう。
その金縛りは直後、白フードから投げられたモノによって解かれた。
「ああ、はいコレ」
空中で大きく弧を描く、ライター。
それはまさしく、アスマのモノだった。
飛段を生き埋めにした際、共に地中深くに埋まり、諦めた師の形見。
「代わりに、このチャクラ刀を貰うよ」
飛段を墓穴から引っ張り上げるついでに拾ったライターをシカマルに返してあげたナルトは、さりげなく【影真似の術】の効果を持つチャクラ刀を懐に入れる。
投げ渡されたライターを呆然と見つめていたシカマルは、ハッ、と顔を上げた。
「じきに、また会うだろう。その時が愉しみだよ」
白フードが風に煽られる。
同時に、何処からか飛んできた黒白の蝶が嵐のように、シカマル達の視界を遮る。
視界を蝶の嵐に覆われ、反射的に目を閉じた。
気づけば、その場にはシカマルと、戦意喪失したいのと、地割れに嵌まって動けないチョウジしかいなかった。敵影すら見当たらない。
まるで蜃気楼でも見ていたかのようだった。
白昼夢でも観ていたかのようだった。
遠くにいるようで近く、近くにいるようで遠い。
うつろいやすく実体なく、とらえどころのない。
存在していたようで、していなかったようだった。
だが、奈良一族にしか出入りを許されない禁じられた森まで続く地割れが、
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