五十六 逃げ水
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、ナルトは目深に被った白フードの下で薄く笑った。
「【影真似の術】はフェイクで、狙いはこちらか…」
流石だな、と称賛するナルトの声を耳にして、寸前まで上機嫌だった飛段の眉間の皺が深くなる。ナルトがシカマルを褒めるたびに機嫌を低下させていった飛段は舌打ちしながら、シカマルを苦々しげに睨みつけた。
「あんな奴、俺の鎌でちょっと刺しただけで死んじまうヤワなヤローのくせによ」
「生き埋め地獄をもう忘れたのか?不死だと過信したのがおまえの敗因だ」
ナルトに拾われなければ今頃地中でシカマルへの呪詛を喚いていただろう飛段が、むすっと唇を尖らせる。
喉元過ぎれば熱さを忘れるという言葉通りに、先ほど地面へ埋められていた事実を忘れている様子に、ナルトは呆れたように嗜めた。
「不死と不老不死は違う──履き違えるな」
【影真似の術】が解かれる事を見越して、チャクラ刀を投擲。
それを回避されることも想定内で、読み通り敵の足を地面に縫い付け、身動きできなくさせたシカマルの隣で、いのがここぞとばかりに印を結ぶ。
「ナイス、シカマル!これで…、」
「待て、いの…っ」
【心転身の術】の構えになったいのを、シカマルは咄嗟に引き留める。
猪鹿蝶のコンビ技は、シカマルが敵の動きを止め、いのが相手の身体を乗っ取り、チョウジによって攻撃するのが基本だが、そんなコンビネーションアタックが通じるような相手ではない、とシカマルは察していた。
だが、いのはいつもの癖で、シカマルが動きを止めた時点で自分の出番だと錯覚する。
嫌な予感がして制止の声をあげるシカマルだが、既にいのは【心転身の術】の印を結んでいた。
その術の矛先が自身に向いているのを見て取って、ナルトは口許に苦笑を湛える。
「──ああ。その術はやめておいたほうがいい」
いのの術を知っているような口振りに、シカマルは眉を顰める。
「そうじゃないと、」
【影真似の術】の効力を発するチャクラ刀で縛られている今、【心転身の術】を仕掛けるのは確かに好機だ。
得策だと理解はしていても、しかしながらシカマルは嫌な予感を払拭できなかった。
そんなシカマルの懸念を煽るように、白フードは淡々と言葉を紡ぐ。
「──死んだほうがマシだと思うことになるよ」
「【心転身の術】…!」
刹那、いのの身体がガクン、と崩れ落ちる。
精神を乗っ取ったのだ、と慌てていのの身体を支えようとしたシカマルだが、次の瞬間には、いのは眼を見開いて震えていた。
「どうした、いの…!?」
術の失敗か、と続けようとした声を、シカマルはそのまま呑み込んだ。
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