五十六 逃げ水
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カマルは印を結ぶ。
シカマルの制止の声も届かず、敵を圧死させようと迫る戦車が土煙をあげて、自分達に接近してくるのを、飛段はどこか愉快げに眺めていた。
「邪神様、ここは俺が…」
白フードを庇うように鎌をクルリ、回す。
アスマと同じように儀式の生贄にする気満々の飛段は、されど隣からの静かな声を耳にして、鎌を振り落とすその手を止めた。
「飛段」
チョウジを鎌で斬りつけ、血を頂こうとした矢先の制止の声に、飛段は従う。
鎌を素直に手元に戻した飛段に、白フード…ナルトは「良い子だ」と微笑ひとつせずに淡々と褒めた。
「せ──っかく邪神様に良いとこ見せよーと思ったのによぉ」
そう不服そうに唇を尖らせるも、褒めてもらえて嬉しいと丸わかりの態度である飛段は、直後の「おまえの見せ場は後々つくるさ」というナルトの言葉に、すぐさま納得する。
「邪神様がそこまで言うなら仕方ねぇな」
一転して鼻歌でも歌いそうなほど機嫌を良くした飛段だが、その一方でチョウジは着々と土煙をあげて接近してゆく。
すぐ傍まで接近してくる戦車を回避するだけにとどめようと、飛段は足を動かそうとし……。
「チッ、またかよ…!」
自由に動かせない足。
己の影と繋がっているその先を、飛段は苦々しく睨む。
暴走するチョウジのフォローをする為、残り少ないチャクラでなんとか【影真似の術】を発動させたシカマルが飛段とナルトの動きを止めていた。
敵が動けない様子からシカマルに心の中で礼を述べつつ、チョウジは全身全霊で一直線に、飛段とナルト目掛けて地面を転がる。
土煙をあげる戦車だけならともかく逃げられない事実に、ようやっと飛段の顔に焦燥の色が過ぎった。
「…ふむ、」
その隣で同じく迫りくる戦車を目の当たりにしながらも悠然とした態度を崩さない白フードを、シカマル達は怪訝に見遣る。
直後、普段冷静沈着なその顔が驚愕に彩られた。
「「「な…!?」」」
地が割れる。
まるで巨大な蜘蛛の巣を描いたかのような地割れ。
地表が突如として陥没し、巨大な割れ目を生み出した張本人は依然として、その場で佇んでいる。
軽く、そう、ほんの軽く地面を足で踏んだだけだ。
だがそんな些細な所作だけで、いきなり地面が盛り上がった。
白フードが軽く足を地面に振り落としただけで、大地が罅割れる。
その罅は深く、それでいて大きく広がり、奈良一族しか踏み入れられない森のほうまで続いてゆく。
「なにあれ…【桜花衝】?それとも【痛天脚】…?どちらにしても軽く地面を叩いただけであんなふうになるはずが…」
五代目火影の弟子であるいのが困惑めいた表情で呟く。
弟子だからこそわか
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