後編
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
してうつむいていた顔をゆっくりと上げた。その顔を見て『彼』は驚愕した。
雪子の瞳は金色に輝いていた。
【そうね、王子様が来てくれないなら、私が自分で王子様を見つければいいんだわ。】
目を光らせながら、雪子は嬉しそうに妖艶な笑みを浮かべた。
そして雪子が胸元から扇子を引き抜いてパッと広げると、それは鳥の羽のように大きく広がった。
彼女がそれを大きく仰ぐと、そこから凄まじい勢いで炎が噴き出す。
炎を浴びた髪の毛の盾はあっけなく燃え上がり、それと共に巨大な日本人形も炎に包まれた。
【ぐああああ・・・】
人形が断末魔を上げる。
先ほどペルソナの火炎攻撃をものともしなかったのがまるで嘘のようにもろかった。
「やっぱり、あいつに効果があるのは彼女の力だけだ。」
巨大な人形はキャンプファイヤーのように激しく燃え上がり、その炎が壁から天井に燃え移って建物がみるみる炎にまかれていく。あっという間にあたり一面が火の海となった。
身の危険を感じた『彼』は無我夢中で彼女の手を取ると、その手を引いて燃え盛る巨大人形を掻い潜り、玄関扉を開けて外に飛び出した。そのまま玄関前のテラスを駆け抜け、舗装された門の手前でようやく足を止めて振り向く。そして目に飛び込んできた光景にギョッとした。
後について来た彼女の和服が燃え上がり、彼女は全身が炎に包まれていたのだ。炎の中で金色の瞳の雪子は、全く動じずに不気味に笑みを浮かべている。
『彼』は仰天して、ペルソナの力で火を消そうと召喚器を頭に当てた。
しかし引き金を行く前に、炎はあっという間に静まって、それは豪奢なピンク色のドレスへと変化した。
これまでの彼女の落ち着いた控えめな様子とは打って変わって、両肩を出した派手なドレス、手には白い長手袋、頭上にはティアラというお姫様のようなスタイルだ。
金色の瞳を輝かせ、彼女は高らかに笑い声をあげる。
その驚くほど艶やかで妖しい姿を前にして、『彼』は彼女の正体に気づいた。
「シャドウ!」
背後では燃え上がる温泉旅館がその姿を変貌させつつあった。彼女の着物と同様、激しい炎が瞬く間に消えていき、その後に現れたのは巨大な西洋風の石造りの城だった。
いったい何が起きているのか理解ができないまま、『彼』は立ちすくむ。
その『彼』をシャドウ雪子が妖艶なまなざしでねめつける。
【私を縛る家も着物も全て燃え尽きたわ。これで私は自由。私は好きなことができる。私は私の王子様を探すのよ。】
彼女は喜悦の表情を浮かべてそう告げた。
「何を言ってるんだ。」
【あなたは私の王子様じゃない。だから私は自分の王子様を探すと言ってるの。】
シャドウ雪子は切り捨てるようにそう言うと、呆然と見守る『彼』には見向きもせずに踵を返し、両手でドレスの裾をつまみながら走り出した。
【王子様、首を洗って
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ