後編
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(もしかして、彼女が勝てないと思っているから攻撃が効かないのか?)
敵の攻撃の隙をついて片手剣で切り付けるが、やはり髪の毛の盾にはじかれる。物理攻撃も全く効果が無い。
戦いながらも、『彼』は頭をフル回転させていた。
(この怪物は彼女が生み出したものなんじゃないのか? 僕が「怪物と戦った」なんて言ったから、それが反映されてるのでは? 自分がここから出られないようにするために・・・。)
頭の中で次々といろんなことが結びついていく。
(怪物だけではない。この迷宮自体が不自然だ。まるっきりでたらめな構造だったのに、彼女が自分で行こうと思った場所にはすんなりとたどり着ける。もし迷宮そのものが彼女の作り出したものならば、それがあり得る。ここが彼女の内面世界だとすれば・・・窓や出口が無いから外に出られないのではなく、彼女自身が『ここから出られない』と思い込んでいるから窓も出口もないんだ。)
再度、襲ってきた髪をはじき、ペルソナを呼び出して氷結攻撃を放つ。
やはり手ごたえは無い。まるで幻と戦っているようだ。
(この怪物は窓を塞いでいる壁と同じ。さっきの謎の声も、本当は彼女の心の声なんだ。だとしたら彼女自身の認識を変えるしかない。彼女がこいつに勝てると思ってくれない限り勝負にならない。どうにかして彼女の認知を変えるんだ。彼女が自分の意志でここから出ようとすれば道は開けるはずだ。)
「助けて、王子様。誰か私をここから連れ出して・・・!」
雪子が頭を抱えてうずくまったまま泣き叫んでいる。完全に常軌を逸した様子だった。
「王子様なんてここにはいない。誰も迎えには来ない。」
『彼』は厳しい声で怒鳴りつけた。
「あなたは・・・あなたは王子様じゃないの?」
すがるように雪子が叫ぶ。
「僕は君の王子様なんかじゃない。」
それを聞いて彼女が絶望の声を上げる。
「それなら私はここから出られない。だって私は逆らえない。王子様が連れ出してくれないと、自分では外に出られない。」
「そうやって閉じ籠ったまま助けてくれる王子様を待ち続けるのか? 王子様が来なければ、君はずっとここにいるしかなくなるんだぞ。」
『彼』は必死に言葉を続ける。
「雪子、君は誰かに閉じ込められているんじゃない。自分で自分を閉じ込めているんだ。君がここから出られるとさえ思えれば、あんな奴は敵じゃないんだ。自分の意思をしっかり持て。王子様が来ないのなら、自分でここを出て王子様を探しに行け。」
「王子様を探しに行く?」
その言葉に雪子が反応を示した。
「そうだ。僕は王子様じゃないけど、君の手助けはできる。だから君自身が立ち向かうんだ。君ならこいつを退けて外に出られる。」
説得の効果があったのだろうか、彼女の様子が変化した。
泣き叫ぶのをぴたりとやめると、突然にすっくと立ちあがり、そ
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