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イベリス
第三十七話 完成させることの大切さその十一

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「咲ちゃんもね」
「自分に聞いて」
「閃いてもね」
「一番描きたいものを描けばいいのね」
「そう、そうしてね」
 そのうえでというのだ。
「描いたらいいのよ」
「そうなのね」
「だからね」
 それでというのだ。
「咲ちゃん自身に聞いてね」
「そうしてみるわ」
「私はそう思うわ。まあ何でも漫画になるわよ」
 愛は笑ってこうも言った。
「それこそ題材は世の中全部よ」
「全部なの」
「そう、恋愛でも学校でもスポーツでもね、何なら異世界も宇宙もあるでしょ」
「ええ、本当にね」
「ホラーもあるし」
「ホラーね」
「幽霊とか妖怪とかね」
 そうしたものもあるというのだ。
「推理もあるし童話とか戦争とか」
「本当に何でもあるわね」
「描けるものはね」
 それこそというのだ。
「全部よ」
「この中にある」
「サラリーマンもOLも漫画になるのよ」
「ビジネスもの?」
「それもね、ビッグコミック系ね」
 具体的な雑誌のことも挙げた。
「歴史だっていいし」
「ああ、織田信長さんとか」
「坂本龍馬さんとかも多いでしょ」
「そういえばそうね」
「ちなみに私伊藤博文さん好きだけれどね」 
 愛は笑って日本の最初の内閣総理大臣の名前も出した。
「痛快で茶目っ気もある面白い人だったのよ」
「滅茶苦茶女好きだったのよね」
「それも有名よね」
「そうよね、そのことも含めてね」 
 それでというのだ。
「面白い人よ」
「そうなのね」
「女好きでも節度あったし」
「誰彼なしじゃなかったの」
「相手の人は選んでね」
 誰とも関係がない無名の芸者にだけ声をかけていたし無理強いもしなかったという、巷の噂とは違って。
「それでだったのよ」
「そうだったのね」
「それでざっくばらんで気さくで」
「そんな人で」
「飾らなくてしかも陽気でね」
「茶目っ気もあって」
「愉快な人だったのよ」
 こう咲に話した。
「力で抑えるなんてしなくて」
「話し合いで解決するタイプ?」
「というか話し合いを政敵でも喜んで行って」
 そうしてというのだ。
「これはという人はスカウトする」
「そんな人だったの」
「だから大隈重信さんを追い出しもしたけれど」
 政界からだ。
「また呼び戻したりお家に泊まったり追い出されそうになったり」
「凄い人間関係ね」
「それでもお付き合いしていたから」
「何か色々あった人ね」
「留学したら水夫さんになってたりね」
 当時はかなり酷使される仕事であった。
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