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ペルソナ3 迷宮の妖女
中編
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るのが彼女。私にとって王子様みたいな人。・・・なのにそれ以上思い出せない。」
感情があふれ出したような泣きそうな声だった。あきらかに彼女の様子が変化してきつつあった。どうやらこの異常な出来事は、彼女の内面に大きく関わっているようだ。
しばらく彼女の様子を見守っていたが、それ以上に何か思い出すこともなく、『彼』はひとまず写真を棚に戻した。
そして本棚の脇のカレンダーに目を止めて、思わず眉をひそめる。
「2011年? ・・・えっ、2年後?」
カレンダーの年が、彼のいた現実世界と合っていない。
ここが異界だとすれば、時間も狂っている可能性がある。もし彼女が本当に実在する人間だとすれば、『彼』のいる現実ではまだ中学生という可能性もある。
何か別のヒントを求めて、さらにじっくりと部屋を見て回る。
並んだ文庫本の上に乗せられた旅行雑誌が気になり手に取ってみた。中のページに付箋が貼られている。
広げてみると「天城屋旅館」という文字が目に飛び込んできた。老舗の温泉宿と書かれている。これが今いる温泉旅館なのだろうか。
彼女にもそのページを見せてみると、彼女はそれを食い入るように見つめて「あまぎや・・・」と旅館の名前をつぶやき、さらにその後 少し目を細めて「あまぎ・・・ゆきこ」と続けた。
「それが君の名前?」
「わからない。ただ頭に浮かんできたの・・・。」
無理に問い詰めても意味は無さそうだ。それ以上は追及せずに記事に目を戻した。
風呂や食事についての紹介記事だけで特にめぼしい情報は無かったが、その最後に「美人女子高生若女将が歓迎してくれる」という記載を見つけた。おそらくこれが彼女のことなのだろう。
「少しわかってきたよ。このおかしな迷宮は、君の家である天城屋旅館が元になっていることは間違い無い。最初は間取りがでたらめだったのに、君が何か思い出すごとに現実の間取りに近づいて変化してきているようだ。そして、この部屋のリアリティは、君が一番馴染んでいる場所だからだ。」
彼女がうなずいた。
「わかる気がする。なんだかこの部屋が一番落ち着く。」
「そこで疑問なんだが、これだけ再現されていながらなぜ窓がどこにもないのだろう。まるで牢獄だ。僕らはこの建物に閉じ込められているようだ。ここから出てはいけないように・・・。」
「そう、私はどこにも行けない。この家に閉じ込められているから・・・。」
思いつめたような表情のまま彼女がそう漏らした。そういえば、先ほどもそのようなことを言っていた。
「それはどういう意味? また、何か思い出した?」
「わからないの。私は外に出たい。でも出たいと思っているのにこの家から出られない。なんだかそんな気がする。」
この迷宮に彼女の内面が影響しているのだとしたら、どうもその辺に原因がありそうだ。
(まさかと思うが、彼女
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