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冥王来訪
第一部 1977年
服務 その4
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の名目で海兵隊を出すつもりでいる」
その言葉を受け、国防長官が尋ねた
「では、大統領令を近々出されるのですか」
「追って詳細は、副大統領より発表させるが、現状の侭なら、6月頃を予定している」
周囲が喧しくなる
大統領は、喧騒を余所に、卓上のヒュミドールを開け、葉巻を取る
シガーカッターを出し、ヘッドを切り落とす
サイズは、ロンズデール(太巻きの葉巻)、銘柄は「パルタガス」(Partagas)
柄の長いマッチを擦り、炙る様にして火を点ける
静かに吸い込み、火が付いたのを確認すると一度消して、再度着火する
味わう様にして吹かし、静かに吐き出す
紫煙がほぼ出ぬ様な上品な吸い方で、タバコそのものを楽しんでいた
副大統領が、問うた
「閣下、ハバナ(キューバ)産の葉巻ですな……」
男は、したり顔で、続けた
「成程、共産圏の内訌を利用して、ソ連を弱めるというお考えですか。
では、最前線たる東ドイツで、工作を仕掛けましょう」
副大統領の脇に居るCIA長官が深く頷く
そして、彼の口から驚くようなことが伝えられた
「閣下。実は、わが方で先方の保安省職員に接触がなされ、其れなりの地位の男を引き込むことに成功しました。
上手くいけば、伏魔殿にある閻魔帳の一つや二つほど手に入るやもしれません」
大統領は静かに灰皿に葉巻を置き、彼の方を向く
「して、方策はあるのか」
彼は姿勢を変えず続けた
「その男は、市民権と、現金10万ドル(1977年段階で、1ドル225円)程を欲しています」
「安いな」
「そう思われます。
妻や愛人などを引き連れて来ましょうから、20から30万ドル要求するかもしれません
保安省秘蔵の個人情報とKGBの名簿を買うのですから、それでも十分元のとれる額です」
大統領は身を起こし、彼に向かって放った
「では、東ドイツに工作を仕掛け給え。
本工作の諸経費に関しては、事後に議会報告に回すように対応。
今回の件に関しては、議事録は作成するが、公開は50年後の特別指定とする」
副大統領が立ち上がる
「諸君、以上で本年の会議は終了だ。
次回はクリスマス休暇明けに会おう」
掛け声と共に室内に明かりが点く
プロジェクターは止まり、スクリーンは職員によって片づけられる
一連の作業が終わった事を確認すると、一同が立つ
椅子に腰かける大統領に深い立礼をすると、執務室から各々が去っていった




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