暁 〜小説投稿サイト〜
或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十四話 旧友来訪の後始末
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守が無感情に反論を促すが自分の居る場所の危険性を改めて認識した石光は途切れがちに舌を回すのがやっとといった様子であった。
「僕は、その――」
「あぁ、捕って喰いはしないさ、今のところはさして重要な場所に立ち入る事はできてないだろう?別に君自体はさしたる価値はない、あくまで問題は君の属する組織のことさ」

「今の所は、だ。あまり嗅ぎ回られると困る。儂は家政だけでなく駒州の諸々の情報をにぎっておるし、豊守は今現在、数多の軍機に関わっておるからな」
 かつての鬼憲兵の視線がそのまま圧力になって石光に襲いかかる。
思わず部屋の外へと後ずさると、扉が――再び開いた。
「失礼します」
宮川が顔を覗かせると、査問を行っているふたりともがそちらへと視線を向ける
「構わん」
「何だい?」
 糾弾者たちの視線が逸れた隙に被告人は無意識に止めていた息をする。あのままでは窒息していたかもしれない、と本気で思いながら外気を貪る石光の姿を心配そうに見ると、宮川は小走りで主達の下に丸められ封が施されている書付を手渡した。
「――連絡室からです、弓月様からのもので、その、御三方以外は、と」
そういって再び彼女は自分の後輩の姿を見る。
「あぁ、彼?問題ないよ、居てくれて助かるくらい。
うん、確かに俺が頼んだものだね、ありがとさん。――それじゃ、下がってくれる?」
そう云って唇を吊り上げる豊久を見て無言で首を振った使用人は入ってきた時と同様に素早く退避していった。
豊久は何度か当主である豊長と小声で会話を続けた後、石光に再び向き直り、口を開いた。
「やってくれたね、ホント。蹄原の両親は書類上のみの義理の関係・教育を受けた天領の私塾も偽装ときた、役所関連の偽装は手が込んでいる、内務省に頼らなきゃ分からなかった。魔導院らしいやり口だよ」
やけに朗らかな口調が恐ろしい。
「取り敢えず、さ。俺の元上司の手紙、返してくれないかな?
当然、写しも一緒に、どうせつくってるでしょ、君」
そう、にこやかに告げる。
 慌てて石光が懐から盗み出した手紙を取り出すとそれを矯めつ眇めつ検めながら豊久は言葉を継ぐ。
「写しは?渡してくれないかな?」
首を振る、未だ写しきっていなかったがこれだけでも――持ち帰りたかった
「もう一度言わせるの?」
微笑が――消えた。
「――渡せと言っているのだよ、私は。」

「ッ――」
その声を聞いた瞬間、石光は実戦経験者――殺人を行った人間である事を強制的に理解させる冷ややかで人を殺した(・・・・・)声だった。
「こ、此処に」
「はい、確かに――ん?途中じゃないか。」
 再び豹変して朗らかな態度に戻った豊久を怯えきった目で見ながら石光は声を震わせる。
「じ、時間が」
「はいはい、成程ね。まぁいいや。念のために家探し
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