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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十四話 旧友来訪の後始末
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いた。
「まぁそうだろうな。だが水軍と協調せねば運搬計画が成立しないのでな
特に、皇海艦隊は護衛に張り付く必要があるからな、あちらは東方辺境艦隊の勢力圏だ、貴重な兵員を輸送中に失うわけにはいかないだろう。
輸送を行うためにも早急に動員を進める必要がある、水軍側からもせっつかれているのだ、君の方からもどうにか窪岡殿に取り纏めを急がせてくれ、兵站課には私からもせっつかせているのだがな」
 二人が問題としているのは各鎮台の兵站計画である。最低でも七月までには必要な鎮台を直ぐに軍へと改組出来る様にしなければならないが、予算措置が進まず、総ての鎮台を即座に動かせるようにすることはできない、動員だけではなく部隊を可及的速やかに運搬し、そこで何万もの男達・幾千もの馬・数百の剣牙虎を戦火へ放り込み、それに耐えうるように養うのはひどく手間がかかるものである。
「東州鎮台は動員と並行して即応体制の強化をせねばなるまい。集成軍で対応するとなれば、皇域に集結している駒城・護州と並び主力となるだろう。」
 東州は龍州の南に隣接する島であり、徴用船を使えば十日も掛からずに主力を派遣出来る。
「即応体制となりますとどうしても導術に頼る必要がでてきますね。
現在でも導術網はある程度構築できておりますが、これはあくまで平時の運営を想定したものであって戦時に耐えうるものとは思えません。さらなる導術士の増員が必要です」

「解っているが――導術士の供給が間に合わない。
水軍は陸軍以上に消耗が激しい導術兵の頭数を揃えたがっている。それにあそこは衆民が強いから導術利用に遠慮がない――陸側ですら、豊久がやらかした所為で最低限(・・・)の導術利用が進められつつあるのだ。
安東大臣の許可が下りたら導術の育成も一度、陸水の教育部にあたる必要があるな
過度の速成は危険だろうが背に腹は代えられん、それと動員の割り振りの再調整も官房主導で行う必要があるか」

「それは必要でしょうが、効果が出るまでは時間が必要でしょう。
それよりも更なる頭数を揃える必要があります」

「ふむ、そうなると問題は近衛、だな。
頭数を揃えるのならば、あの連中も駆り出す必要がある。――動員が後回しになっているのは確かだがな」
 頭数だけで考えるなら総軍(とは言っても一万に届くか届かないかである。)を動かすのも必要ではあった、質は儀仗兵としての役割の強い禁士隊に弱兵ぶりに定評のある衆兵隊であるが、動員が進まない以上はそれこそ剣牙虎(ねこ)の手でも借りたい状況である。
「ですが、育預殿の事も考えると。そう簡単に近衛を出すわけにも行かないかと」
 豊守子飼いの参謀、大辺が抗議の声を上げる。
「実仁親王殿下もそこまで愚かではないだろう。駒城の育預殿で北領の英雄だ。万全を期さずに前線に送るとは思えな
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