暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
下命
[1/2]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 明けて、1978年正月15日
マサキは、この世界に来て、初めての正月を祝うのを後に欧州へ旅立った
羽田発アンカレッジ経由ヒースロー(ロンドン)行きの航空機に乗った
片道7時間のフライトは、ゼオライマーを長時間操縦するより疲れる
その様に感じられた
初めて乗るこの世界の大型航空機は、ドグラム社の三発ジェット旅客機
あの《DC-10》に酷似した形には、苦笑しか出なかった
車窓から見る雪原は、途切れなく続き、その広大さを感じさせる
この地が、ソ連への売却案が出て米国議会で大問題になっているのを、英字紙で見た
自国の都合で、100年前に国家予算の不足で売り払った地を、BETAを理由に買いなおす
ソ連の行動に、憤慨する米国民の気持ちも、理解出来る
 いくらビジネスクラスとはいえ、狭い席だ
脇に居る美久は、良く寝られると思う
恐らく、推論型人工知能が人間の睡眠周期を計算し、それに類似した休息時間であろう
周りを見ると、引率役の斯衛(このえ)軍将校が居るが、二人はずっと話し込んでいる
良くも、5時間近く話していて飽きないものだ
騒々しくて結局一睡も出来なかった
あの黄服と黒服の男達には、経由地に着いた際には苦情を告げると決め、車窓に視線を戻す
 
 彼は背もたれに深く腰掛け、瞑想(めいそう)した
恐らく、この並行世界では全てが一緒なのではなく大きな枠が一緒で、細部が違う
航空機メーカーがほぼ其の儘なのには、苦笑した
この世界の「マクダエル・ドグラム」が、元の世界の「マクドネル・ダグラス」
もしかすると、今乗っている航空機はあの、《DC-10》なのだろうか……
妙な寒気を感じるが、それは高高度の低気圧のせいであろう
そう自分に言い聞かせる
 
 経由地に降り立った際、3時間ほどの時間があったが、例の男たちとは逸れてしまった
引率者なのに、無責任ではなかろうか
しかし、機体は輸送船で送り、人員だけ先に欧州入りとは、変な計画である
最前線のソ連の隣国、西ドイツに行くのも、億劫だ
観光や新婚旅行のごとく、南独やノイシュバンシュタイン城を巡ることが目的ではない
ビールを味わい、ソーセージをほお張り、冬景色を楽しむわけでもない
戦争なのだ
最前線に立たされて、あの禍々(まがまが)しい化け物共と戦うのだ
些か、気が引ける

 彼は再び機内に戻った
アンカレッジ経由ヒースロー行きの後半部分の飛行
およそ10時間近く掛かるフライトの中、再び瞑想へと入っていった

実際の訓練開始と作戦決行日まで結構な時間がある
日にして約3か月弱
何でも、ソ連国内の雪解けを待ち、夏になってから実施するという
道路事情も悪く、疫病の猖獗(しょうけつ)する白ロシア、ウクライナ
1941年のバルバロッサ作戦(対ソ戦の作戦名
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ