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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
かくしてウィステリアは、結成する
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葵と紫式部が自主練に励んでいる頃。かの八百万ソフィーはどこにいたのかと言えば、廃墟にいた。
まだ人の手の入っていない、世界崩壊時そのままの廃墟。
かつては賑やかな繁華街であっただろうその場所には人一人おらず、ビルなどの建物には植物がびっしりと生え、人工物と緑が共生する不思議かつ穏やかな空間を作り出し、たまに不思議な鳴き声の鳥が飛び去っていく。
そこを、八百万ソフィーは難しい顔をしながら歩いていた。
「おかしい…変だ。」
2人のレッスンをしようと思ったその時、へカーティアにこう言われた。
「最近活発になっていた半グレ集団が何かおかしい。調べに行って欲しい。」と
神社の近く、廃墟にはそこを拠点とする半グレ集団がいたことは知っていた。
何も知らない女性を善意と見せかけて攫って強姦したり、通りかかった人を殺して金品を巻き上げたりしているという悪い噂ばかりの集団だ。
いずれ退治しようとは思っていたのでちょうどいいやと現地に赴いたのだが、何かがおかしい。
「静かすぎる…。」
静かなのだ。
ここは確かに半グレ集団の拠点と聞いた。
しかし、あまりにも音がしない。
人の、気配がしない。
「…。」
「悪い奴らの心境を覗くのにはうってつけだと言われましたが…これでは来た甲斐がありませんね」
と、ソフィーの隣にいた小さな少女がそう言葉を漏らす。
赤いチューブで繋がれた目玉を懐に浮かせている、いかにもただものでは無い少女の名前は
古明地
(
こめいじ
)
さとり
人の心を読む能力があり、半グレ集団の心理を見抜いて更正の余地があるかどうか見極めるため呼んだのだが、まず人がいないのでは意味もなかった。
「ごめんさとり。わざわざペットと遊ぶ時間を割いてまで来てくれたのに…。」
「かまいませんよ。こうして地上を散歩するのもたまにはいいものですから。」
赤い目玉がギョロりとソフィーを見、そしてまた前を向く。
「心から謝っている…あなたは本当に正直な人ですね。」
「さとりを前に嘘なんてつけないからね。じゃ、もう少し調査をしてみようか。」
そういい、辺りを見回すも人影らしきものも見当たらずどうしたものかと思った時、
「?」
何かを踏んだ。
よく見れば足元には大量の紙が散らばっている。
引きちぎられたようなそれを集めてみると、それは本だったようだ。
「これは…?」
「本だ。陰陽師…安倍晴明…。」
破られたページ達から読み取るに、どうやら安倍晴明についての本だった様子。
さらに少し歩くと表紙だったものも見つけ、拾い上げる。
端にはシールが貼られており、そこにはこう書かれていた
『葵紫図書館貸出本』と。
「どうしてこんな所に…こんな状態で?」
葵紫図書
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