第十八話 少年期@
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者にも問題ないって言われたけど、一応検査入院みたいなものだし。俺全然病気とかしないから、病院のエンカウント率が少なくてなんか緊張するな。
こんな風に、ぐだぐだとおしゃべりしたり、家族に連絡したり、仕事場に電話で平謝りしたりしながら過ごしたのが俺の最後の記憶だ。事件は俺が眠りについた深夜に起こったらしい。
「お空に行きましょう」
「やだ」
死神と老人は無言でにらみ合う。時刻は深夜。死神はその返事に疲れたように肩をすくめる。
「いや、あんた寿命だから。ご臨終だから。糖分のとり過ぎだから」
「せめて、世界中の甘味食い終わってから来てくれ」
「『せめて』で使う願いじゃねぇよ」
仕方がない、と死神は自身の手に鎌を出現させた。死神は死者の魂を連れていくのが役目としてあるが、時たまこんな風に気力で抵抗する人間がいるらしい。つまり日常茶飯事の出来ごと。おかげで死神は武闘派が多い。ここらへんは死神の愚痴で知った。
あと死神の鎌には、切りつけた相手の魂とその世界とのつながりを、強制的に切り離す力を持っているらしい。魂を傷つける訳にはいかないため、その生きていた世界とのリンクを消すことで、死を与えているようだ。普通は肉体と精神と魂は繋がっているため、そのどれかが弱まれば、自然に空へとのぼっていけると言っていたな。
んー、なんかもう難しいから簡潔にまとめるとしよう。天命受け入れろや、と実力行使に乗り出した死神と、絶対いやだ、とごねるおじいちゃんという構図だな。要はおじいちゃんピンチです。
しかし、ここで死神にとって誤算だったのが、おじいちゃん強かったみたい。
「なッ、なんで鎌避けられるんだよ!?」
「これぞ、生存本能! さっき引き出しの中に隠して食っておいた甘味の力が、俺に力を与えてくれる!!」
「お前、糖尿病治す気なかっただろ!! というか俺がここにいるのも、その最後の糖分が原因だ!!」
死神の手から逃れるためにまさしく死闘。死神もさすがに焦る。死神の力でこの病室から外に現象が漏れないようになっているとはいえ、病室で暴れるなと。大声あげるなと。戦いに夢中過ぎて、お互いヒートアップしすぎていた。
そして―――
「……死闘に夢中になりすぎて、おじいちゃんがつい隣で寝ていた俺を盾にしてしまい、俺が逆にご臨終になってしまったと」
「あの騒ぎで爆睡するような人間が、近くにいるなんて思ってもいなかったんだ」
「というか、俺完全に巻き込まれただけじゃん!?」
……うん。やっぱり関係ない気がしてきた。
******
「アルヴィン、アリシア。クッキーが出来たわよ」
「やった! お母さん、いつもみたいにジャムいっぱい入ってる?」
「えぇ、も
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