第一部 1977年
服務 その2
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く
「そういわれて居ります」
男が、口を開いた
「篁は、失うのに惜しい男だ。
それにその娘御とやらも、戦術機開発の技術者であろう。
米国から、戦術機のノウハウと技術は、ぜひとも欲しい。
上手く誘い出して、日本に連れ出す手立てはありそうかね……」
「実は、今夕の次官会議で、その件が上がったのですが……」
男は頷く
「例の作戦を理由に、彼を日本国内に帰国させるか、欧州に行かせるか、紛糾いたしまして……」
右手で、襟元を直す
「一番無難な案は、日本で保護するという案が出ました。
彼女を、彼の妻、或いは妾と言う事にして、日本に連れ出す案です」
男は、右手を額に置いて悩んだ
直後、姿勢を正すと、彼の問いに答えた
「それならば、儂の方で何とかしてみたいと思う。
直々に参内して、殿下に上申書を認める用意がある。
奴には、、常々気を付けるよう釘を刺しておいたのだが……
巌谷では抑えにならなかったな」
陸軍大将の階級章を付けた人物が口を開く
「《翁》、ご存じでしたか。
ご相談いただければ、我々で動いたものを……」
《翁》は、正面を向いたまま、続けた
「何、儂もあの様な小童共を信用しすぎただけの事よ。
今回の件は、城内省、ひいては斯衛軍の恥部故、我々の方で預からせて貰う」
海軍の黒い制服を着た男が言った
袖章から海軍大将だと分かる
「詰り、《閣下》のお預かりで、納めるのですか」
男は、身を椅子から乗り出して答えた
「そうだ。
ただ、奴程の男には、《相応しい家格》の娘を宛がってやりたかったなと……。
これが殿下の耳にでも入れば、さぞ落胆されるであろうよ」
彼が黙るのを待っていたかのように、次官が答えた
「では、一計が御座います」
《翁》は、次官に問うた
「聞こうではないか」
次官は立ち上がり、簡単な報告を述べた
「国連発表に拠りますと、対BETA作戦によって、凡そ世界人口の3割が失われる程の事態になっています。
この事を踏まえて政府部内では、検討がなされ、六法の大規模改廃が、俎上に載っています。
法制局や内務省内からも、事態の推移を鑑み、嫡子と庶子の相続の差異を解消する改正案が、提出されました。
既に、中ソにあっては、成年男子の急速な減少が問題となっております。
喫緊の課題ゆえに、今夕の次官会議で、了承。
具体案は、明日の閣議に持ち込む予定です」
男は身動ぎせず、語った
「それで」
次官は、手に持つ書類を一瞥すると、顔を見上げて続けた
「そのブリッジス家の令嬢と関係を、問題にせずとも、済むかもしれません。
仮に、彼と、彼女の間に、子息が在っても、相続法上は嫡子と変わらないとなれば対応は変わるやもしれません。
もっとも現行法上は、父親が認知すれば、その子供には日本国籍が付与されます。
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