第一部 1977年
服務 その2
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帝国・国防省
ある一室で、大臣他複数名を集めた秘密会合が催されていた
議題は、「曙計画」の今後と、ソ連・白ロシアでの「パレオロゴス作戦」への派遣であった
一見無関係に見える同計画と、白ロシア派遣
全ては、次期国産戦術機開発の実戦データや運用結果を得る為
ここで問題が起きた
米国内の情報筋から怪情報が齎される
当地に留学中の篁祐唯が、然る高級将校の娘と《深い関係》にあると、報告が上がった
篁祐唯という人物が唯の技術将校であったのならば、その娘と結婚させて話は終わりであった
彼は、武家で、黄色の衣を赦された《名門》
血統から言えば、志尊の血脈を受け継ぐ家から分家した、五摂家に近しい貴種
そして戦術機に、配備予定の74式近接戦用長刀の設計主任
扇情的なタブロイド紙や赤本(劣情を?き立てる様な書籍)を賑すだけの醜聞で済む話ではなかった
話し合いは、同計画より彼個人の扱いに関する件に移っていた
「篁の徒事は、本当かね」
大臣の一声が会議室に響いた
大声ではないが、良く通り明瞭な声
声の主の方に一同の顔が集まった
「情報筋からの話では……、そう伺っています」
周囲が騒がしくなる
「米国へは、事実関係は、調査中との事で、乗り切ったが……」
「彼は、思想的にも家柄的にも問題ない人物として送り出した。
これが事実なら……、大規模に仕掛けられたのかね」
「当人が知らぬところで、美人局にでも載せられたのかもしれませんな……」
周囲の話声が静まるのを待っていたかの様に、男が語り始める
年の頃は、50代半ばであった
「なんでも噂のある美女とやらは、先次大戦で父親が捕虜になったと聞き及んでいます。
その様な事を勘案すると、工作があったとも、考えられます」
周囲の反応を余所に、壮年の男が口を開いた
場違いな着物姿からは、奇異な印象を受ける
一番離れた席に座る彼に、視線が集まる
「事務次官としての意見かね」
次官と呼ばれた男は、一礼した後、彼に答えた
「ご参考までに、これが資料です」
彼は、脇に置いたカバンから、タイプされた資料を取り出し、人数分配る
白黒刷りの写真と共に、英文と日本語の資料が各人の手に渡る
周囲から感嘆の声が上がった
何処から、声がした
「あやつも、この様なことをするとは……」
再び周囲の人間が振り向くと、声の主は、先程の男
元枢府や内閣に隠然たる影響力を持つ人物
《影の大御所》と噂される怪人
帝都城内の出入りが自由に許される数少ない一人でもあった
一葉の写真を見せつける様にして手に持って、話し続ける
「この美女が、ミラ・ブリッジスかね。
南部出身で、米陸軍、エドワード・ブリッジス大佐の娘とある。
本当ならば、彼はその様な背景のある人物と《関係》したというのか」
次官が頷
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