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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
恋篝 U
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数コール響き、鼓膜に反響する。
僅かなノイズ音の後、その主は声を発した。時代がかったような、それでいて、威圧感のある女性の口調だ。
『──星伽白雪だな。
こうして
(
・・・・
)
話すのは初めてだろう』
白雪は辺りを見渡し、誰もいないことを確認して声を潜める。
「……あなたは、誰?」
『勘が鈍いな。まぁ、教えるまでもないだろう。既に貴様は、私のことを知っているのだからな』
わざわざこうして接触を図ってくる人物。
しかし生身の現実ではなく、通話という愚像を用いるとは──自分の詳細を明かしたくないから、だろう。
ともすれば、白雪にとって思い当たる節は、1つ。
「……何が目的なの、《
魔剣
(
デュランダル
)
》」
『既に
分かりきっている
(
・・・・・・・・
)
ことを、貴様は問うのか。……笑わせるなよ、時間稼ぎをしようとしても無駄だ。私としても、暇ではない。今から、貴様に交渉を持ち掛ける。
それを呑まねば、そうだな……。最愛の者を、殺めても構わんのだろう? 交渉とは即ちこれであり、森羅万象には対価が付いて回る。それを自覚しろ、星伽よ』
実に交渉が上手い相手だ、と白雪は思った。
呑めなくはない条件を餌にしつつも、対価の価値は異様に高い。断れない構図を、自らの言葉で作り上げている。
しかし、白雪としても保身に走る意味はない。
「なら、早くその条件を言いなさい。私も暇ではありません」
『ふむ、いいだろう。……己が
身
(
・
)
を差し出せ。それがこちらの条件だ。時間の猶予は無い。今ここで返事をしろ』
「いいでしょう。その代わり、周りの者に手出しするのは許しません。その時は、私が許さない」
『貴様が反故にせずに来れば、の話だがな』
白雪は逡巡する素振りすら見せず、即答した。
それは暗に、彼女の最愛の者を想う気持ちの強大さを示唆していた。それでありながら、正義心というモノも、また。
「《魔剣》、私が約束を破るとでも思っているのですか」
『フッ、貴様がそんな人間でないことは把握済みだ』
《魔剣》は愉悦そうに笑みを零す。そうして、告げた。
『場所は『■■■■』、時間は『■日』の『■■時』だ。口外は許さん。抜け出してこい、周囲に勘づかれるなよ──』
◇
キンジは買ってきた花火と小型ライターを袋に提げ、小走りで駆けながら、白雪のもとへと進んでいく。
心地良い夜風が、髪の間を通り過ぎていった。地を蹴る音と、木々の葉が擦れる音と──誰かが話す声が、聞こえる。
まさか──。
足音を消しつつ、木の影から様子を見る。暗くて見えにくいが、ベンチに座っている白雪は、電話を片手に誰かと話していた。
普段なら絶対に見せ
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