第一部 1977年
策謀 その3
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全を招いたと聞いた時、深い失望感を覚えたことが思い起こされる
作戦遂行の為には、党派対立や思想闘争などを脇に置いて軍事編成の運用をせねば、危険だ
1600万人前後と人口の少ない人民共和国だ
数億の人口を抱える支那や膨大な領土のあるソ連とは違う
瞬く間に、この国は消え去るであろうことを……
そうなってからでは遅い
恐らく英仏は、この国を時間稼ぎの場所としか考えて居らず、作戦が不発に終われば、地図の上から消える
ポーランドまで戦火が広がるようでは駄目だ
白ロシアで食い止めて、ソ連領内に追い返す位の勢いでないと、大軍勢に闊歩される
あの恐ろしいジンギスカンの大軍が攻めよって来た時、欧州の騎士達は、キリスト教の下、十字軍に次ぐ軍勢をもってして食い止めた
過去の事例のように上手く行くとは言わないが、我々も欧州という名のもとに、キリスト教文化圏の下に、合同軍を立ち上げ戦うような姿勢で臨まないと、やがては、ジンギスカンに滅ぼされた中央アジアの回教国の様に、蹂躙される
広い大海に覆われた日本や、国力の盛んな米国とは違うのだ
地理的にも、政治的にも、現状を維持させる方策しかない
その方策としての西側との連携
国土の大半を蹂躙され、人口の大半を失い、斜陽に成りつつある赤い帝国
シベリアへの遷都では飽き足らず、アラスカへの逃避計画に着手しているとの話も上がっている
やがて東欧諸国から完全撤兵の日も近い
その日を待たずして、自主独立の道を選び、専制的な社会主義の放棄とソ連との決別
かの帝国と決別を奇貨として、西側社会への参画の手段にすべきではないか
それ故に、この軍事作戦の足を引っ張る保安省の連中を出し抜くような方策を打つべきである
少将は、その様な熱い思いを、目前の男に語った
彼は、話を聞き届けた後、最後のタバコに火を点けた
静かに紫煙を吐き出すと、語った
「話は分かった。
全機とは言わんが、せめて指揮官機だけでも西側と連携可能に改良するよう、技術本部と参謀本部に持ち込もう」
少将は机を支えにして、立ち上がった
「本当か。そいつは助かる
交渉チャンネルの有無で、話が全然違うからな」
「もっともそれには前線での裁量の拡大も絡んでくる。
その辺を参謀本部で決めねばなるまい」
前に身を乗り出す
「そいつさえ決めれば、あとは政治局に持ち込むだけなんだな」
深く頷き、同意の声を上げる
「それ以上は党の仕事だ。良い伝手があれば良いが……」
少将は微笑みを持って、彼への返事とした
男は、彼の右手を取ると、強く握手した
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