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冥王来訪
第一部 1977年
策謀 その2
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る尋ねる
「ボルツさんのところでも行って来たのか……」
彼の発言を聞いて、肩を竦める
「まさか。お屋敷の《旦那様》から頂いたのさ」
唖然としたが、彼に対して怒りが湧いてきた
まだベアトリクスとは結婚もしていないのに、彼女の父・アーベルを《親父さん》と呼んだヤウクの行為が気に入らなかった
幾ら将来を誓い合った仲とはいえ、法律婚すら躊躇っているのに、その思い人の父を、すでに岳父として扱う彼の無神経さが許せなかった
彼は目の前の青年の肩を強く掴み、前後に揺らした
「まだ俺は、独身だ。お前はそうやって周囲に言って回ってるのか。
人の気持ちも考えろ。この……」
その時、ハンニバル大尉が笑った
彼は、笑いながらベルンハルト中尉に向けて言った
「貴様の気持ちも分からんでもない。
俺も気になる若い娘がいる。
まだいい年頃になるまで待っているところさ」
二人はあまりの事実に唖然としていた
この強面で、どこか知性を感じさせる雰囲気を持つ男に、その様な思い人が居た事実に
そして柄にもない冗談に参加したことが、信じられなかったのだ
「まあ、人の事も言えんが、諸君等もそろそろ身でも固めておくのも悪くなかろう。
5年近くに及ぶ対BETA戦でソ連邦では人口の3割強が失われたとの国連報告がある。
将来に向かって若い妻を迎えて、人口を増加せしめ、国力の涵養に努めるのも、立派な愛国心の発露の一つではなかろうか。
それに家庭内で愛欲の発散というのも、健康な人間としては自然なことであると考えている」
こんな笑顔をする大尉を見た事がない
思わず顔を見合わせる
そして笑った
ヤウク少尉が周囲を窺う
そして大尉に向かって話しかけた
「では、同志大尉、食事にでも致しましょう。
外も寒いですし、宿舎に戻って夕食にでもしませんか。
少し早いですが」
ベルンハルト中尉は、腕時計を見る
もうすぐ15時半だ
周囲はすでに日が落ち始めている
ドイツの冬は日没が早い
16時には暗くなってしまう
男たちは談笑しながら、宿舎への道を急いだ


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