第一部 1977年
策謀 その2
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被っている
彼らが話し終えるのを待っていたかのように、両手を外套のマフポケットに入れ、縮まっている
周囲の様子をうかがってから、両手をポケットの外に出す
化繊の防寒手袋をした手を振りながら、彼は語りだした
「ソ連の戦況は、新疆のハイヴが陥落してから停滞しています。
仮に今回の事件の損害があったとしても、大勢に大きな影響はないと考えられます。
まあ、どの様な結果になったとしても……」
ハンニバル大尉は、目の前の青年に語り掛けた
「BETAの撃滅するという主任務には変化は生じないと言う事か」
青年は、続ける
「はい、ベルリンっ子の噂ですが、何でも今回襲撃を行ったのは米軍の特殊部隊で、黒海を経由してカザフスタンから、ノボシビルスク市に潜入し、新型の原子爆弾を爆発させたそうです。
市内は、ほぼ跡形もなく消え去り、駐留していた部隊は30分ほどで壊滅させられてます」
大尉は、目を大きく見開いて、面前の青年を見る
「核武装の戦術機部隊だと!」
彼は目を輝かせ、言葉を淀みなく伝える
「何でも、目撃談によると、大型の戦術機が持ち込まれたと、モスクワっ子の間で話題になってるそうです。
最も噂ですから、どこまでが真実か不明瞭ですし、その相手がどのような行動に出るか、予想も出来るとは思えません」
青年は、大げさに手を振ると、肩を竦めた
その様子を見たベルンハルト中尉は、彼を窘めた
「ヤウク、仮にも参謀の立場にある君が、根拠のない噂を、流布するような真似は慎んでほしい」
両手をヤウク少尉の方に置く
「君は、参謀として部隊の為に情報を集めるのは助かるが、何よりも正確な情報が欲しい。
そんな噂話より、一番大事なのは根拠のある一次情報だ。
公文書や機関誌、各国の新聞報道から真実を探すことをすべきではないのか。
文諜(文字情報による諜報)で、一番大事なのは分析だ。
市井の噂話は、あくまで参考にしかならない」
「根拠はあるさ、これを見てくれ」
そういうと、肩から下げた図嚢(書類や地図を入れる野戦用のカバン)から数枚の紙を取り出した
彼は、ヤウク少尉からそれを受け取ると驚いた
英国の大手通信社ルイターのイスタンブール発の外電を報じた西側の新聞の複写
「デイリー・テレグラフ」(The Daily Telegraph)「ワシントン・ポスト」(The Washington Post)「ル・フィガロ」 (Le Figaro)などの《ご禁制》の品々であったからだ
「どうやってこんなもん、手に入れたんだ」
ヤウク少尉は、満面の笑みで応じる
「君の《親父さん》の友人さ。同級生だと話したら、茶飲み話のついでに貰って来た」
彼は、その話を聞いた瞬間、頭が真っ白になった
まさか、育ててくれたボルツ老人がその様な危険な橋を渡ったのかと……
恐る恐
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