第一部 1977年
策謀 その2
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ていなければ、行動パターンから敵側に一方的に撃破される事態に陥ることもあり得ます」
男は口髭を触る
「戦術機同士の戦闘に発展する事態があり得ると言う事か」
青年は深く頷く
「先日のアルバニアの事例はそういった点で、今後の研究材料になります。
米海軍は、航空機との連携で戦術機を使い、アルバニアの部隊を数日で壊滅させたと伺っています。
新型の戦術機が数種投入されたとの話もありますが、実態がつかめていないのが現状です」
「最悪、今作戦の終了を待たずに戦争状態に発展する可能性もあると言う事か……」
青年は、男の周囲をゆっくり歩きながら話す
身に染入る様な寒さで、じっとしていられない様子だ
「仮想敵の米英軍ばかりではなく、ソ連の動向も気になるところです。
シベリアにあるKGB管轄の収容所が、何者かに襲撃され、壊滅。
その際、防衛に当たった戦術機部隊が一方的に失われるという事例があったとも聞いています」
手袋越しにしきりに口髭に触れる
呼気で、髭が凍るのを気にしている
「例の超能力者の実験施設か」
青年は立ち止まって振り返る
「噂ですが、その様に伺っています。
事件の余波で、ソ連軍が、戦線から離脱、或いはわが軍と事を構える様になれば……」
『ソ連の完全支配』
最悪の事態を避けるために、軍事的均衡の為の戦術機部隊
青年なりの考えであった
「対人戦も無駄ではないと言う事か」
「ただ、BETAと違ってソ連はまだ多少は話し合いの余地があろうかに思えます」
「米英軍も同じであろう」
「はい。
それ故、こちらの力を鼓舞するためにも、多少なりとも対人戦能力向上は、役に立つかと……」
男は暫し黙ると、頬に手を当てて考え込んだ
ゆっくりと口を開く
「概ね、君たちの意見には賛成しよう。
なるべく損害の少ないことに越したことはない」
目の前の青年は破顔し、謝意を述べた
「ありがとうございます。同志大尉」
彼は、真剣な眼差しで、目の前に居る男を見つめた
眼前に居る男こそ、戦術機実験集団の指揮官であるバルツァー・ハンニバル大尉であった
大尉は、空軍地対空ミサイル部隊の出身で、同集団に多数を占める空軍操縦士候補生とは違い、航空機操縦経験はない
しかし、対BETA戦による軍事編成の変化の煽りを受けて、《左遷》させられた将校の一人であった
ソ連留学のある彼は、前任者のユップ・ヴァイグル少佐と違い、青年将校たちに一定の理解を示すよき人物でもある
何より留学による衛士訓練経験のある上司との出会いは、ベルンハルト青年には僥倖であった
脇で、静かに別な青年が佇んでいた
ベルンハルト少尉より、質の落ちた化繊混紡の灰色がかった生地のオーバーコート
ダークカラーの別布の襟を立て、空軍の帽章が刺繍してある人造毛の防寒帽を目深に
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