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冥王来訪
第一部 1977年
策謀 その2
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来る《パレオロゴス作戦》に向けて、第一戦車軍団の訓練が始まった
戦術機部隊と砲兵、機甲部隊による連携訓練
ウクライナ戦線での経験により発案された《光線級吶喊》の他に、新たな科目が加わった
対人戦、対航空機戦を想定した訓練であった
対BETA戦を第一に考えていた彼等には衝撃的だった

人造毛の防寒帽の耳を下ろして被り、綿の入った防寒服を着た男が、青年に声を掛ける
防寒服は、人造毛の別布の襟が付き、上下揃いの深緑色
防寒用の長靴を履き、服と同じ色の防寒手袋をはめて居る
金髪碧眼の屈強な体躯で、顔には整えた口髭を蓄えている
青年は、灰色に染められた羊皮に、空軍の帽章が刺繍してある防寒帽
ダークグリーンの別布を付けた襟のオーバーコートを着て、羊皮製の防寒手袋をしている
オーバーコートは脛丈の長さ
純毛の厚手のトリコット織で、深い灰色から将校用の物と一目でわかる
足首から膝下までがフェルト地で出来た防寒長靴
首の下から、耳まで覆うように、筒状の頭巾を被り、顔だけを出している
「今回の訓練について、何か、聞いているのか」
口髭の男が、青年に聞いた
青年は黙ったままだ
「戦術機の習熟ですら、鍛え上げられた戦闘機パイロットが半年かかるというのに、対人訓練とは作戦開始までに間に合うのだろうか。
来年の夏、早ければ7月までには仕上げなくてはなるまい。
或いは、NATO軍の都合によって早く仕上げねばならなくなるかもしれない。
WTOや参謀本部がどのような機会で、我々を投入するか分からないが、来年初春までにはある程度まとまった結果を示さねばならないだろう」
男は懐疑的な見解を青年に述べる
「参謀本部がアルバニアの事例を参考にして組み込んだのは分かる。
だが、我々の第一任務は、第一戦車軍団の支援と、《光線級吶喊》による戦線の露払いだ。
この様なことをしていては、十分な訓練時間がとれるとは思わない」
青年は答えた
「自分の方で、参謀本部に掛け合って、都合してみます」
彼は、静かに答える
「ですが、《光線級吶喊》も対人戦も、技量の向上には変わりのないように思えます。
戦車や航空機に比して前方投影面積が一般的な戦術機の場合、18メートルもありますので、低空飛行や高機動により攻撃を避けるしかありません。
通信や状況によってより的確な判断がなされ、部隊が自在に運用できなければ、唯の標的と何ら変わりありません。
ある程度、行動様式の決まったBETAと違って、対人戦は読めないところがあります。
対空砲や対戦車砲の攻撃を受ければ、いかに装甲の厚い戦術機でも防ぎきれません」
「詰り、この訓練は無駄ではないと言う事か」
青年は、息を吐き出すと、目の前の男に答えた
「はい。
仮に内乱や暴動による出動命令が下った時、対人訓練がなされ
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