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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十六話 懺悔
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と自分の主張を取り下げた……。ヴァレンシュタイン提督の言うとおりだ、私は彼を無意識のうちに見殺しにしようとしたのかもしれない……」
「提督……」
止めるべきだと思った。注意すべきだと思った。でも何故か出来なかった。提督は淡々と話している。
「彼は私と親しくなりたがっていた。何度も自分は敵ではないと私に言った。でも私は彼を受け入れる事が出来なかった……。彼が怖かった、そう、私は彼が怖かったんだと思う。何というか得体のしれない不気味さ、それを彼に感じていた。いや、今でも感じるときが有る。だから私は彼を排除しようと……」
「提督、もうその辺で……」
止めようとして出した声だった。でも提督は話すのを止めない。首を横に振りノロノロとした口調で話し続けた。
「あれ以来彼は変わった。心を閉ざし他者を受け入れなくなった。そして誰よりも苛烈になった。今では皆が彼を怖れている……。私が彼を受け入れなかったばかりにそうなってしまった。私の所為だ……、私の」
「提督……」
私の声など聞えていないのかもしれない。
「彼を見ているのが辛かった。だから軍を辞めたいと思った。軍人に向いていないと言う理由で自分を欺いてね。ワイドボーンの言うとおりだ、私は無責任な卑怯者だ……」
「もうお止め下さい!」
悲鳴のような私の声だった。堪え切れなかった、もう聞きたくなかった。ヤン提督が私を見ている、何の感情も見えない顔だ。慌てて顔を背けた。
「……済まない、大尉」
私の目から涙が零れた……。
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