Mission
Mission4 ダフネ
(2) ヘリオボーグ研究所総合開発棟14F倉庫(分史)
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オス人にしか理解できないだろうな。まあ、付き合いが続けば折り合いつくだろ。ジュードの時だってそうだったんだし)
自分の中で結論づけたルドガーは、続いてエルの前にしゃがんだ。
「まだふてくされてるのか?」
「エル、ふてくされてないし!」
「しかめっ面で言っても説得力ゼロだぞ」
ルドガーはエルの両頬を摘まんだ。エルは逃れようとじたじた暴れる。横でエリーゼが目を丸くし、ティポはケタケタ笑っている。
「別にいいじゃないか。雷が怖いくらい。そういう子供らしいとこ見せてくれると、俺も安心する」
「怖くないってば! 子ども扱いしないで!」
エルはルドガーの手を逃れると、ルルと一緒にジュードのほうへ行ってしまった。
「エルってばもったいなーい。子供でいられる間はいればいいのに」
「ユティはどんな子供だったんですか?」
「毎日戦う訓練。魔物退治はよく。犯罪者ハントはたまに。それ以外は、家におじさま方がいらした時に遊んで勉強して。おじさま方が一緒だったらとーさま付いてなくても山降りていいって、とーさま言ったから、カメラ持って出かけた」
明らかにエリーゼがコメントに窮している。ルドガーはフォローすべくコメント係を引き受けた。
「過保護なのかスパルタなのか分からない父親だな。よく母親が止めなかったもんだ」
「かーさま、わたしが5歳で家出てった」
地雷を踏んだ。今度はルドガーが喘ぐ番だった。
「平気だよ。捨てられたんじゃない。たまに会えた。愛されてたの、ちゃんと知ってる。ワタシとかーさまの絆は、距離じゃ壊せない」
はっきり、きっぱり、胸を張って、まっすぐな瞳で、笑って言われた。
ルドガーはエリーゼと顔を見合わせて苦笑し合った。自分たちの動揺――母のいない子への同情は的外れにも程があった。
「でも、全部の人がワタシじゃない。距離で絆も居場所も失くした人たち、たくさんたくさん。アルクノアはその最たるもの」
ユティはカメラを構えると、ついさっきルドガーたちが殺したアルクノア兵たちの死体を写した。裂傷も銃創も流れた血も苦悶も無念も、余す所なく、レンズを向けて切り取った。
「せっかく帰れた故郷なのに……最後に残ったものまで自分たちの手で壊しちゃうなんて……」
「気持ちは分からんでもないさ」
唐突に言ったアルヴィンを、エリーゼははっと見上げる。
「20年も経ちゃあ家も街も人も変わる。自分が知ってるまんまのものなんて1コだってない。そんな『知らない場所』に帰って、果たして本当に『帰った』と言えるのか、ってね。最後に残ったもんなんかじゃねえ。皮肉なことにエレンピオスへの帰還は、アルクノアの連中に『お前らのエレンピオスなんてとっくにない』って思い知らせたんだ」
実感
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