第四百八十四話 呉越同舟に非ずその十五
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「それで一方的に殺さなくてはならないってされてな」
「本当によってたかってだったからな」
「あんなことしていい筈がないだろ」
こう言うのだった。
「政治的にはそう判断出来てもな」
「割り切れないよな」
「何とか助けようとするのも政治だ」
排除されるべき者もというのだ。
「ましてそいつに悪意がないならな」
「尚更だな」
「機械ではないわ、人間は」
氏康も言ってきた。
「それなら」
「そうだ、不可能と思ってもな」
「可能な限り努力することね」
「そいつを助けようとな、あんな簡単に一方的に潰すなら」
そう動くならというのだ。
「俺は動かない」
「氷室さんも」
「ああ、親父がそう言っても止める」
総理である彼がそうした判断をしないとわかっていてもというのだ、若しそう判断した場合はというのだ。
「仕方なくても最後の最後までだ」
「助けようとすることね」
「そうして努力することだ、そして助けられたら」
「いいわね」
「諦めるな」
最後の最後までというのだ。
「人を助けることもそしてな」
「他のことも」
「少なくともこいつに似た奴はそうだった」
氷室は万丈を見て氏康に話した。
「最後まで一人になっても友達を見捨てなかった」
「その人だけが人間らしく聞こえるのう」
「そうね」
元春も隆景もその話には深刻な顔になった。
「どうも」
「何とも酷いことじゃ」
「私もそう思うわ」
「俺もそう思う」
氷室もだった。
「あんなことをするなら終わりだ」
「本当にな、俺がその場所にいたらな」
万丈はまた言った。
「そう思うしかねえのが辛い」
「俺もだ、生きていたらいいな」
桐生はその万丈に苦い顔で応えた。
「青のアマゾンも」
「そうだよな」
「ああ、死んだかも知れないが」
「それでもな」
「生きていて欲しい」
桐生は心からこの言葉を出した。
「絶対にな」
「俺もそう思う」
「同じだな」
「あんな状況で死んでたまるか」
「そう思うからな」
こうした話もしてだった、戦士達は訓練に入った。彼等はこの世界でも汗をかきそのうえで決戦に備えるのだった。
第四百八十四話 完
2021・8・15
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