第一部 1977年
策謀
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らかに焦っている
どうやら自分が考える以上の存在らしい
彼は左手で弾倉を抜き取って、高く掲げる
右手に持った拳銃と左手で握った弾倉を、ゆっくりと床に置く
直後、後ろに居る兵士達に羽交い絞めにされた
「やっと話を聞く気になったのだな」
そういうと男は、机の上にあるものを床に散らかし、そこに腰かける
そして語りだした
「NVAの高級将校を逮捕して、軍内部の粛清を進めよ」
ホチキス止めしてある資料を、手で掴み上げる
彼の面前に向かって放り投げる
「これが名簿だ。
罪状は、反乱未遂とでも作って、逮捕しろ。
そうすれば、《俺たち》が《居なくなった》後も、《この国》を、貴様等は、《操縦》出来る」
そういうと、胸からタバコの箱を取り出す
口つきタバコを一本抜き取り、丁寧に吸い口を手で潰す
タバコを口に咥えると、使い捨てライターで火を点けた
どこからか、持ち出した花瓶を灰皿の代わりに使う
「走り出した馬車は、もう止められない。
止めれば、大事故になる」
机から立ち上がり、彼に近づく
顔に、紫煙を吹きかけた
「貴様等が、西ドイツでの工作が成功したのは、ルビヤンカ(KGB本部の所在地)でも話題の種になっている。
その興奮が醒めやらぬ内に、来てみれば、この様な姿だとは、思わなんだ」
顔を背けた彼は、後ろから顔を抑えられ、再度、紫煙を吹きかけられた
「用件は以上だ。即刻失せろ」
締め上げていた手が緩む
飛び掛かろうとした瞬間、後ろから複数の男に、押さえつけられ、床に伏す
「出ていけ、小僧」
再び羽交い絞めにされた彼は、腹部に強烈な鉄拳を喰らい、蹲る
ドアが開け放たれると、兵士達が彼の体を持ち上げる
持ち物と同時に投げ出すようにして、廊下に打ち捨てられた
兵達が出て行った後、静かにドアを閉める
男は無言のまま、室内を歩く
椅子の前まで来ると、後ろに居た禿髪の男の方を向いた
太い額縁の眼鏡をかけた男は、無言で立ち尽くしている
薄く色の付いたレンズは、光が反射しており、目から表情が窺い知ることが出来ないほどであった
「同志シュミット」
ソ連人が、ひじ掛けが付いた椅子に腰かける
顔を上げると、禿髪に声を掛けた
「今日から《暴れろ》」
禿髪の男は絶句している
「本日より、ソ連人として、ドイツ人にどういう立場か、《教育》してやれ」
目に力を入れて、彼の方を睨む
「KGBとして、何をすべきか……。
KGBであるから、何が行えるか。
堂々と、振舞え。
そして、貴様の野望とやらを、見せてみるが良い」
男は、勢いよく返事をすると同時に敬礼する
「了解しました。同志大佐」
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