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レーヴァティン
第二百三十四話 手を出さないものその七

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「それに専念する」
「大坂に戻っても」
「そうする、では戻る」
 こう言って実際にだった。
 英雄は仲間達と共に大坂に戻った、そうして今度は領土全体の政に入った。そしてそのうえでだった。
 蝦夷の話を聞いてこう言った。
「そうか、あちらは近頃獣がか」
「増えていてでござる」
 智が話した。
「特に羆で、でござる」
「大きなものが出ているか」
「それが途方もない大きさで」
 それでというのだ。
「最早並の魔物ですらでござる」
「敵わないか」
「そうなっているとか」
「そうか、ではだ」
「それならでござるか」
「蝦夷は俺達なら移動の術ですぐに行ってだ」 
 そうしてというのだ。
「帰られる」
「だからでござるか」
「その羆を退治するか」
「そうするでござるか」
「放ってはおけない」
 その羆をというのだ。
「蝦夷の民達も困っているな」
「どうやら」
「ならだ」
「民を救う為に」
「俺達のうち誰かが行ってだ」
 その蝦夷にというのだ。
「羆を退治してだ」
「すぐにこの大坂に戻る」
「そうするか」
 こう言うのだった。
「ここは」
「まだ領土でなくとも」
「そして蝦夷の民もな」
「まだ幕府の民ではないでござるが」
「やがて俺達の民になるからな」
「蝦夷も幕府の領土になる」
「そうなるからな」
 だからだというのだ。
「ここはだ」
「先にでござるか」
「誰か行ってだ」
 そうしてというのだ。
「退治するか、若しくは腕利きを何人かパーティーを組ませて送ってな」 
「そうしてでござるか」
「そのうえでな」
「羆を退治するでござるか」
「羆は大き過ぎるとだ」
 その場合はというと。
「入られる穴がなくてな」
「それでっちゃよ」 
 愛実も深刻な顔で言ってきた。
「冬眠出来なくてっちゃ」
「おかしくなるな」
「熊は冬眠が必要っちゃ」
「冬の間は多く寝なければならない」
「まさに冬の間ずっとっちゃ」 
 冬眠という言葉通りにというのだ。
「冬の間はっちゃ」
「寝るものでな」
「寝られないとっちゃ」
 その場合はというと。
「おかしくなるっちゃ」
「狂気にさえ陥るな」
「恐ろしいまでに狂暴になるっちゃよ」
「しかも大きいとな」
「それだけ脅威になるっちゃ」
「だからな」
「何とかっちゃ」
 愛実は深刻な顔のままさらに言った。
「しないとっちゃ」
「民が襲われるな」
「そうなるっちゃ」
「小さな集落だとそれで滅ぶ」
 英雄もまた言った、表情も声の色も変わってはいないが見る者には深刻さを帯びていることがわかった。
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