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冥王来訪
第一部 1977年
潜入工作 その3
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その日、ノボシビルスクで何かが起きた
ソ連近海で特殊任務にあたっていた米海軍の《環境調査船》は、一部始終を聞いていたのだ
その情報によるとハバロフスク・ノボシビルスク間の通信量は深夜になって急増し、翌朝にはほぼ絶えた
膨大な通信の内容は、一旦日本国内にある米軍基地から、メリーランド州にある米軍基地へ持ち込まれた
その場所は、米国内の最高機密の一つに当たるNSA(国家安全保障省)の総本部
数千から数万の人員が出入りすると噂されるが、謎の機関
ワシントン官衙に出入りする官吏からは、「何でもないで省」などと冷やかされる部局

対BETA戦では、対人諜報活動は重視されてきたが、通信傍受や分析は、やや疎かにされてきた面は否めない
CIAやFBI(連邦捜査局)と違って、表に出ない秘密の組織。
ここで、何かしらの纏まった成果を出さねばならない。
かつてのブラックチェンバーの様に、無理解な上長や国務長官によって、組織そのものの存続が危うくなりかねない事態も否定できない
《調査船》も立て続けに数隻失われる事態も、この10年来相次いだ
 
軍や情報機関の動きとは別に政府も動いた
深夜、ホワイトハウスに、閣僚が集められる
約半年後に迫る欧州の合同作戦に関して、NSC(国家安全保障会議)の臨時の会合が開かれた
議題となったのは、ソ連軍の動員兵力の実数に関してであった
会議冒頭から、国務長官は、CIAや陸軍省の報告は、ソ連の実働部隊に関して《過大報告》されているのではないかと、詰め寄った
BETA侵攻にあっている状態とはいえ、動員能力に問題があり、報告にあるような大規模兵力をうまく活用できていない
このような状況下において、予定される《パレオロゴス作戦》の主導的立場を取らせるのは、危険だと述べた
無論、反共や戦後の欧州の政治状況の変化を見込んでの発言ではあったが、副大統領やFBI長官もその見解に一定の理解を示した
しかし、国防長官と、CIA長官は、ソ連の戦力は《強大》で、隠匿された部隊が、各衛星国にある状態で、ミンスク以東の東部戦線を任せるには、《十分》との見解を示した
国防長官が恐れたのは、何よりソ連国内の派兵で、貴重な戦力が失われることであった
道路事情が劣悪で、疫病の根拠地の一つである白ロシアやウクライナの平原に、大規模兵力の展開は、世論の反対も多い
将兵の父兄等の理解も十分に得ていない現状
その様な状況での大動員の実施は、厳しいであろう事
かの地で、あの《大帝》や《総統》が数十万単位の将兵を損耗させた《冬将軍》の凄さに、内心たじろいでいる面もあることを彼は否定しなかった
対人戦と違って、BETAとの間には、講和も休戦もない
恐らくソ連が計画している秘密実験、超能力者の意思疎通も失敗する概算が高い
核ミサイルによる飽和
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