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絶撃の浜風
外伝 利根編 01 利根四号機
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そんなものはありはしなかった。それは、当時の司令部の生き残りが責任逃れをするための言い訳に過ぎなかった



 利根が思うところは他にもあった。麻雲機動部隊が懸念すべきは、攻撃隊が空振ることではない。その間に敵の攻撃を受けてしまうことである

 麻雲は攻撃にばかり前のめりになりすぎて、守りがおろそかだった

 なれば、山口多聞少将の進言通り、爆装済みの艦爆を一刻も早く空母の外に出し、誘爆のリスクを回避しなければならない。更には、上空には交代で艦戦による防空の傘を張るべきである

 そういう意味では、アリューシャン作戦に同時展開させている龍驤と隼鷹の不在が悔やまれた。彼女らに艦戦ガン積みして防空に当たらせていれば、SBDの空爆を防げたかも知れなかった。五航戦の翔鶴と瑞鶴が不在なればこそ、当然そうすべきであった


 そもそも何故四隻の主要空母に密集隊形をさせているのか。護衛の艦艇も、いかにも少なかった。我々は今、受けに回っている可能性が高い。なれば空母撃沈のリスクを分散するためにも、機動部隊はもっと広範囲に展開すべきだ


 これでは、まるで沈めてくださいと言っているようなものだ





 利根と多聞の懸念通り、密集隊形を採っていた加賀、蒼龍、赤城は次々に沈められた



 蒼龍は三発の爆弾が甲板を貫通し格納庫で爆発、整備中の艦爆や爆装が次々と誘爆し一瞬にして大破。後に磯風の雷撃による介錯で最期を迎えた

 加賀には五発の爆弾が命中し、その内の一発が艦橋前に置かれていた小型燃料車に直撃し引火、爆発し艦橋が吹き飛び幹部が全滅、全艦火達磨となりガソリン庫に引火、大爆発ののち沈没という壮絶な最後であった

 赤城に至っては、たった一発の500キロ爆弾が格納庫で誘爆し、内部から乗員もろ共焼き尽くされた。舵が効かなくなり洋上に停止、第四駆逐隊によって雷撃処分された



 あの時山口多聞乗艦の飛龍だけが難を逃れたのは、敵機の雷撃を回避しながら密集隊形を避け、本体から50q離れた雲の下に移動していたからであった






 そして、第一機動部隊が敵の攻撃を受けていた頃、そのはるか後方・・・300海里(約550km)離れたところを航行していた連合艦隊旗艦「大和」の作戦室で、本山六三八司令長官は、将棋を指していた


 しかも


「赤城」、「加賀」、「蒼龍」の被弾炎上という急報を受け取った時・・・・







「うむ」「ほう、またやられたか」の一言だけをつぶやき、将棋はやめなかったという







本山は、初めから第一機動部隊を助ける気など・・・更々なかったのである










この時の第一機動部隊の陣容は、
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