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絶撃の浜風
外伝 利根編 01 利根四号機
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つける算段をしていたようにも見えた



 


 そんなぐだぐだな麻雲に《活》を入れるべく、司令部では飛龍から乗り込んできた名将山口多聞少将が気焔を吐いていた


「艦爆隊でもいいから、今すぐ発進しないと手遅れになる!」と


 山口多聞少将からしてみれば、空母が艦載機を満載したままで敵の攻撃を受けることは、火薬庫に火を付けるようなものであった

 一刻も早く艦載機を発艦させ、爆装でも何でもいいからとにかく敵空母の甲板に穴を開けるだけでもやるべきと考えていた


 
この、山口多聞少将の進言は、慧眼であった。
 
 もしここですぐに艦爆隊を発艦させていたら、少なくとも誘爆による加賀、蒼龍、赤城の沈没は避けられたかも知れなかった

 航海士の天測が誤っていなければ、戦況は全く逆になっていた可能性もある

 
 確かに、艦戦の護衛もなく艦爆隊で攻撃を仕掛ける事は、こちら側の被害も甚大になる可能性は高い
 爆装では空母は沈められないという麻雲の意見もあながち間違いではない

 米空母の多くが甲板下に装甲を施しているため、爆撃で沈めるのは容易ではなかった。それでも敵艦載機の発着艦を阻害する意味でも、飛行甲板を爆撃で破壊する意義は大きかった

 艦戦に比べれば、艦爆は確かに格好の的ではあるが、一度急降下爆撃に入ったら、艦戦でも止める事は出来なかった




 この、麻雲中将が却下した直掩機をつけない艦爆隊による攻撃であるが、今、正に赤城たちに襲い掛からんとしていたのは、スプルーアンス少将麾下のエンタープライズから発進したSBD艦爆隊であった

 通常であれば、SBD隊と艦戦による直掩機が揃うまで上空を待機させ、編隊が組まれてから攻撃に向かう。だが、それではかなりの時間を要し、一刻を争うこの戦いに於いては機を逸する事になりかねない

 スプルーアンス少将は、発艦したSBDが3機程揃ったところで、直掩機をつけずに順次攻撃に向かわせた。確かに、このSBD隊の多くは撃墜され、その被害は甚大であった・・・・だが、


 このエンタープライズSBD隊こそ、赤城たちを葬りミッドウェーを勝利に導いたのである。それは皮肉にも、山口多聞少将の進言の正しさを証明するものであった




 山口多聞少将は、部下たちに『お国のためにその命を俺にくれ!』と言い切れる将官であった
 


 事態は既に、そこまで差し迫っていたのである





 だが、麻雲はこれを却下した。当然発艦命令は出されなかった

 それどころか中途半端なタイミングで雷装への再換装を命じた。最悪のタイミングで、最悪の決断をした。それが第一機動部隊の命運を分けた



 「運命の5分間」などという、
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