暁 〜小説投稿サイト〜
絶撃の浜風
外伝 利根編 01 利根四号機
[4/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
け、当初予定されていた艦攻による二段索敵を取りやめていた

 一段索敵も、一応念のためというよりも、単なるポーズの意味合いが強かった

 八機もの艦攻を偵察に回す事を惜しみ、温存していたのである

 

 そこへ、0428、利根四号機からの敵艦発見の報である


 
 麻雲の心は、既にミッドウェー島攻撃に移っていた。28分前に飛龍攻撃隊の友永丈市大尉からは、ミッドウェー島に対する「第二次攻撃ノ要アリ」の報を受け、赤城、加賀の雷装を爆装に換装させていた

  
 もし、この時麻雲貴下司令部が、利根四号機の索敵線の異常に気付いていれば、間に合ったかも知れなかった。麻雲にとっては、実はこの時が最後のチャンスだった



 事態は既に、遭遇戦の様相を呈していたのである・・・・




 だが麻雲は、ミッドウェー攻略を諦めきれなかった。半年前の真珠湾攻撃において、工廠や重油タンク施設を破壊せず撤収した事で、本山から激しく罵られた事が頭をよぎったのかも知れない


 
 「艦種確メ接触セヨ」



 これが、利根四号機に出された返信であった


 利根は頭を抱えた。そして思う。司令部の指示には従おう。引き続き索敵は行う。だが、通信傍受されていると確信に至った今、索敵隊の行動も敵に筒抜けである
 ましてや艦種を判別となると、低空で接近し敵の機銃掃射の中を掻い潜らなければならない。たかだか360km/h程度の速力しかない水偵でそれをやることは、『死ね』と言うに等しい。確実に索敵隊の何機かは失われる事になる
 せめて艦攻隊の半数、いや三分の一でもいいから直ちに発艦して欲しい。このチャンスを失いたくはない


 だが、利根は知らなかった。麻雲中将は既に雷装を外させ、爆装に切り替えさせていた事を・・・




 常識的に考えて、この戦況で空母機動部隊を伴わない艦隊がこの海域に展開しているわけがなかった。米軍はこんなとこまでのこのこ遊びに来ているわけではない

 麻雲がこんな簡単な事に、気づかないはずがない



 だからこそ・・・・



利根四号機にはああ言ったものの、麻雲中将以下司令部は動揺していた

 今から更に雷装に切り替えるとなると、更に時間を要する事になる。整備士の負担も尋常ではない。仮に雷装に換えたとして、空母がいなかったら・・・・
 逆にもし空母がいたら、爆装では沈められない・・・・そんなジレンマに、司令部は判断を躊躇し、悪戯に時間を無駄に費やしていた





 この時、麻雲はこの作戦の失敗を本能的に感じ取っていたのかも知れない



 この時の司令部の空気は、利根四号機の敵艦発見の報を曖昧のうちに、作戦失敗の責任を同機になすり
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ