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絶撃の浜風
外伝 利根編 01 利根四号機
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機動部隊はいないと断じ、ミッドウェーにコースを定めている


 
 そんなはずがあるわけがなかった。これまでの機動部隊の位置とコース、索敵コースと範囲を考慮すると、それ以外の海域・・・・77度から100度付近に敵艦隊が潜んでいる可能性が高い。それが利根の見解だった

 当時の利根の索敵機パイロット達は優秀で、利根と同様に思っていた。この索敵には、国家存亡がかかっている。立場や外聞などに構っている場合ではない



 彼らが危惧するまでもなく、その事は山口多聞少将が、麻雲中将に進言していた。だが、麻雲は聞き入れなかった



 パイロット達は一計を案じ、カタパルトの故障と偽り利根四号機の発艦を遅らせ、先に発艦した筑摩索敵隊とは意図的に時間差索敵になるよう画策した。更に羅針儀の更正不良を理由に途中からコースを変更し、敵艦隊が潜んでいると睨んだ海域に展開した

 これなら、例え通信傍受されていたとしても、敵の裏をかける・・・利根はそう踏んでいた



 ビンゴだった。利根4号機は敵艦隊10隻を発見した。利根の中で、暗号通信解読の疑惑が、確信に変わった。直ちに機動部隊旗艦赤城へと通信が送られた。もしこの通信が傍受されているとしたら、敵は全力で当海域を離脱するだろう。迅速な対応が必要だった

 だが、機動部隊からの返信は「引き続き索敵を行い、艦種を報告せよ」との事だった
 

 建前として、敵艦隊の中に空母がいるか否かを知りたいというのはわかる。だが、通信を傍受されていたと仮定した場合・・・・状況的にこれは敵機動部隊である可能性が極めて高い

 もしこれが敵機動部隊だとしたら、今が千載一遇のチャンスである。この上索敵を継続するなど、機を逸する愚策としか思えなかった

 そして忘れてはならない。これは同時に、我が第一機動部隊の、最大の危機となる可能性が高いのである




 これは、利根のオブラートに包んだやさしい言い回しであって、「索敵の継続」の真相はこうである


 麻雲以下司令部は、海軍軍令部の意を汲んだ本山六三八長官からから、含みを持たされていた

 本山連合艦隊司令長官は、米機動部隊撃滅を重視していたが、長野修己軍令部総長はこれに難色を示し、ミッドウェーの攻略と哨戒基地の前進を示唆していたものの、主目標がどちらであるのかを明確にしなかった。その上で本作戦の主導権を本山に掌握させる見返りとして、ミッドウェー島攻略を最優先事項とする軍令部の意見を受け入れ譲歩させていた


 見方を変えれば、米機動部隊の撃滅を、海軍軍令部がそれとなく邪魔をした形となっていた


 本来ならば、敵機動部隊を壊滅した後それを成すべきであったが、麻雲は本山の意を汲み当海域に敵機動部隊はいないと決めつ
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