壱ノ巻
毒の粉
1
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「高彬は〜どこよー!」
ばしん!と障子を開けたら中にいた由良が目を見開いて固まっていた。
「ま、る、瑠螺蔚さま、どうなさったんですか?」
大きな瞳とぽってりしたちいさな唇をポカンと開けた由良は今日も愛らしい。
…じゃなくて。
「どうもこうも…まったくあのボケは!あ、由良。喜んで。縁談はチャラになったわよ」
「えっ!?」
「穏便に済ませたから佐々家にも何の影響もなし。そもそもそこまで重要な縁談じゃなかったしねー思ったより簡単だったわ」
「ほ、ほ、ほ、本当ですか!?」
「うん。だから、安心してね」
「ありがとうございます!」
由良は手をついて、あたしに深々と頭を下げた。
「いや、そんな。てれちゃうな、もう・・。あ、由良。高彬は何処?あ〜い〜つ〜め〜」
「え?兄上様はまだお帰りになっていらっしゃいませんし、今日はいろいろと忙しいらしく、天地城に御泊りすると言っていましたわ」
「あ、そう。て、ことは明日まで帰ってこないのよね?ふぅん」
まったく、思い出しても腹が立ってくる。
あいつが、あたしを置いていったから、亦柾に絡まれるし、なんか変な話聞いちゃうことになったんだ。
ま、鷹男というカッコいい男と知り合いになれたけど。
それでも、全くの偶然とはいえ、何かヤバイ会話を聞いちゃって、もしそれが見つかってたらその場で斬られてたかも知れないんだし。
それもこれもあれも、みいぃいーーーんな、全部っ!高彬が悪いんだ!
ま、モトはといえばあたしが変なおせっかい心出して天地城に乗り込んだこと、って気もしなくもないけど。
でも!あたしが滅多に天地城になんていかないの知ってるはずなのに置いていく高彬は酷い男よ!
「たーかーあーきーらーのおおォォ〜〜〜〜〜ばぁーーーーーかっ!」
あたしは夕焼け空に思い切り叫んだのだった。
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