第11話『襲撃』
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−−−……きて
声が、聞こえる
ーーー…起きて
この声は……
−−−起きて、草場玲人
俺を、呼ぶ声か……
「……ぅ……ん……?」
呼びかける声が聞こえた気がした。答えるように目を開くと
「ここは……」
一面の白い世界だった。雪国などを比喩して表現しているのではない。右も、左も、前も、後ろも。全てがただ真っ白の世界に玲人はいた。
「夢、か……?」
少なくとも現実ではないだろう。彼の身に宿る歪む世界もまた、このような光景を見せるものではない。
つまり、考えられるとしたら夢か、あるいは他のOI能力者による攻撃だ。
……が、まぁ。後者ならば玲人が気づかない訳がない。夢と考えるのが妥当だろうが……
「うーん、惜しい。当たらずも遠からずってところかな」
白い静寂を破るその声は、玲人の頭上から聞こえてきた。玲人が視線を上げると……
「ここは層と層の隙間の世界。何も見えないのは何もないからだよ」
そう言って微笑を浮かべる、上下逆さまの少年がいた。
「隙間?」
「そう、隙間。世界を繋ぐゼロ次元。……まぁ、こんなことはどうでもいいだろう?今ここで重要なのは、僕が君の前にいるってことだけさ」
……それもそうか。
「誰だ、あんた?一体……」
「うーん、そうだなぁ……」
玲人の質問に考える素振りを見せる少年。顎に手を当てて、上下逆さまのまま歩き出す。
「……うん。君の先輩、かな」
「先輩?」
「他にも言い方はあるけど、今回はそれが適切だね」
「そうか……」
いまいち掴みどころがない。少年に対し玲人はそう思った。近くにいるようで遠い。よく知っているようで全く知らない。
そんな奇妙な感覚を受ける少年だが……敵ではない。玲人の奥底の、直感と言える部分がそう告げている。
「それで、その先輩とやらが俺に何の用だ」
「あぁ、そうそう。僕は君に警告をしに来たんだ」
少年は立ち止まり、真剣な顔をして玲人を見上げるように見下ろす。
「警告?」
「あぁ。まもなく君は力を手にする。それもそんじょそこらの力じゃあない。全てを滅ぼすことさえ可能な偉大な力だ」
……心当たりが、無いわけではない。虎徹山に来る少し前から、荒れ狂う歪む世界と共に、玲人の中から溢れ出そうとする“ナニカ”の存在を感じていた。
「大きな力は運命を狂わせる。呑まれたくないなら飼い慣らすことだ」
それだけ言うと、少年の姿は階段を降りるように遠ざかっていく。
「待て!それはどういう意味……」
「期待してるよ……」
玲人の意識は、そこで再び途切れた。
−−−……きて
声が、聞こえる
ーー
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