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冥王来訪
第一部 1977年
潜入工作
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を掛けるものが居た
彼が、ゼオライマーの次元連結システムの部品として作ったアンドロイド、氷室美久であった
彼女は、支那で、中共軍の戦術機パイロットが来ていた、身体の姿が透ける様な特別な繋ぎ服を着ていた
なんでも《衛士強化装備》と呼ばれる服で、戦闘機飛行士の飛行服に相当する物であった
ゴムやビニールに見える生地は、伸縮性を保持し対衝撃に優れた《特殊保護被膜》と呼ばれるもの
ヘルメットや飛行帽の代わりに、通信機を内蔵した顎当てを付ける
ゴーグルや眼鏡に相当する物はないが、網膜に外部映像を透過する機能があるという
彼は、薄ら笑いをし、見下すような表情で、彼女へ答えた
「美久、その様な破廉恥な服などを着て、何をしている。大方、ロボット操縦士の慰安でもさせられているのか」
そういうと、彼女は赤面し、胸を隠すように右腕を当て、左手で下半身を覆うような仕草をした
彼は、その姿を見逃さなかった
「流石は、推論型の人工知能だ。部品にしかすぎぬのに、さも、人間の女の様に振舞うとは、貴様の学習機能というのも捨てたものではないな」
そう言って近づき、彼女の右腕を左手で掴み、右手で左胸を強く揉む
彼女は赤面し、下を向いている
「止めて下さい」
「これが、奴らの飛行服か。面白い材質だな。
だが、身体の形状が露になるというのは、設計上の機能に見合うとは思えん」
そう言い放つと、彼は彼女を軽く突き放す
「で、奴らのロボットに乗った感想は……」
彼女は、ゼオライマーの副操縦士と言う事で、試験的に戦術機への訓練に参加させられたのだ
アンドロイドであることを知らない軍は、彼女の《身体能力の高さ》に驚愕し、軍事教練を飛ばし、簡素な試験の後、戦術機訓練に放り込んだのだ
一連の経緯を聞いた時、マサキは、近い将来起こるであろうことを夢想した

現時点で、ソ連圏での大規模な敗北。
やがてはBETAと呼ばれる化け物共は、東亜まで侵食してくることは想像に難くない
高々常備兵力が20万前後に帝国陸海軍には対応は厳しかろう
そうなれば促成栽培による徴兵
教育期間の短い兵士の質の低さでは、前線の維持は厳しい
忽ち国内の成年男子は、選抜された兵士を使い果たしてしまうであろう事
その時起るのは、恐らく大規模な学徒動員と婦女子の徴兵
幾らカシュガルのハイヴを消し飛ばしたとはいえ、まだ世界には4つあり、状況の悪化は時間の問題であろう事
仮に欧州で食い止めても、制圧した支那を迂回して、シベリア経由で東進される可能性は否定できない

この社会の日本は、自身の社会の日本以上に、冷血で非情な国家だ
恐らくは見せしめとして、《高貴なる義務》などと、偽りの賛美で、貴族層、所謂《武家》の婦女子などを徴兵
彼女達をBETA共への《生贄》とし、饗するのであろう

そう
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