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冥王来訪
第一部 1977年
潜入工作
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対ソ作戦として秘密研究所の襲撃作戦
計画段階から、CIAより入手した航空写真と、それを基にした地図
秘密都市や研究所に関しては、先次大戦で抑留されたドイツ軍将兵の証言やその報告書を参考にされた

マサキは、その様な経緯から改めて、元の世界との差異をまざまざと見せつけられた
この世界では、1944年に日本は講和
主要都市への大規模空襲、原子爆弾投下、ソ連の条約違反の侵攻、国際法を無視したシベリア抑留は発生おらず、対ソ感情は、冷戦下にあって、現実社会よりかなり融和的な面が見え隠れする
不思議なことに、以上の出来事は、すべて、ドイツ国内で起こっているのだ
二昼夜行われたドレスデン空襲は、現実より過酷なものになり、東部戦線で降伏したドイツ将兵の数も、その強制抑留者の規模も格段に大きい
何より、ベルリン中心部に2発以上の原子爆弾が投下されるという凄惨な結末になった事を未だ受け入れられぬ自身が居た

帝国陸海軍内部にも、それなりの数の対ソ融和派がおり、今回の件でもその一派は騒擾事件の寸前であったことをのちに知らされた
聞くところによれば、大伴忠範という青年将校が主たる人物として戦術機に関する《勉強会》があり、その一派が、《将来の日ソ間における戦術機研究》の為、参謀本部に作戦中止の血判状を出したと聞いた時、彼は、不快感を覚えた

あの、《大東亜戦争》の際、ソ連への備えが甘かったゆえに、愚にもつかない対米交渉仲介を依頼し、満洲からの根こそぎ動員で、ほぼ無防備であった北方を事ごく掠め取られた事
その地に居た軍民270万人は、奴隷としてシベリア奥地へ拉致、10年近く抑留され40万近い人命を失ってしまった事実を、苦々しく思い起こしていた
何より、マサキ個人としては、生前ソ連交渉の道具となった経緯から、今一つソ連という国家を信用できなかった 

《右派》を自称しながら、英米への接近を危惧し、共産圏に近づくという大伴一派の姿に、彼はかつて元の世界で、亡国への道を辿らせた《統制派》の《革新将校》の姿を、見るような感じがしてならなかった
神聖不可侵の君主をして、スターリン主義を日本に当てはめんとし、あの破滅を招いた《売国奴》共への、深い怒りの感情が、彼の内心に、まるで溶岩の様に、沸々と湧いてくる

異世界においても、日本が再び自滅の道を進むことに呆れるとともに、この国の上層部の迷走に呆れ果てた
異界の住人である自分にとってはどのような結果になっても構わないが、ただ今は居候の身
寄るべき場所である、この世界の日本が、その様な愚かな策謀や内訌によって、簡単に滅びられては困るのだ
せめて自滅の果てに滅びるのであれば、自身が《冥府の王》として、全世界を支配してからでも遅くは無かろう
「どうかしましたか」
その様な思いに耽っているとき、ふと彼に声
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