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冥王来訪
第一部 1977年
慕情
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う。
こんな社会情勢だ。法律婚でも良い。
結婚しよう』
彼女は彼から顔を背けた
『熱で頭が可笑しくなったのかしら』
見かねた妹がたしなめる
『ベアトリクス』
そして椅子から立ち上がる
『まあ、良いわ』
彼の方を振り向いた
『後ね、私の所にスカウトマンが来たの』
彼の表情が曇った
『まさか、あの……』
彼女は彼に近づく
『多分《褐色の野獣》のシンパサイザーだと思うんだけど、丁度アイリスが居る時に来てね……』
アイリスが続ける
『金髪の小柄な男性でしたが、私も一緒にスカウトしようとしたんです』
彼女は体温計を取り出し、温度を見る 
『丁度、教官がいらして、その方と揉み合いの喧嘩になって、事なきを得ました』
ベアトリクスが振り返る
『多分、《野獣》の情夫って噂のある男よ。父も驚いていたわ』
『兄さん、8度2分です。今週はゆっくり休まれては……』
彼は目を見開いて驚いた 
その様な破廉恥な関係を公然と見せつける保安省の職員の意識の低さに……
『情夫!社会主義者に非ざる奴だな……』
黒髪の美女は、笑いながら答えた
『なんでも噂だと、男も女も選ばないそうよ。特に年下の美丈夫は好みだそうで』
仮に噂とはいっても、その様な薄気味の悪い奴が妹や恋人に近づいたのだ
許せない
興奮のあまり、熱が再び上がってきたのが判る
彼はベットへ倒れこんだ
『寒気がしてきた』

夜半に目が覚めた彼は、再び考えた
保安省のスカウトマンが、アイリスの事を《戦術機マフィア》の頭目の妹と知らぬわけがない
彼等は焦っているのだ
_アルバニアの事をソビエトが見捨てた_

なりふり構わず、行動している連中に、こちらが合わせる必要はない
淡々と用意をして評議会で辞表を出させる
一月前は、時間が掛かるような感じがしたが、そうでもない
聞いた話によると少将は人民軍の青年将校達の《相談》に乗っているらしい
岳父も屋敷の主人と共に政界工作を行っている様だ
椅子に腰かけて寝ている二人の美女の姿を一瞥すると、彼は再び夢の世界に戻った







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