第二章
[8]前話
「それでもな」
「見付かっていませんか」
「使い方がな。本朝では誰も知らぬ」
「大明でそうとは」
「長い間使われていなかったのでな」
「実は我が国では使っています」
ここで朝鮮の者は言った。
「今も」
「そうなのか」
「そして書もです」
使い方を書いたそれもというのだ。
「残っています」
「そうなのか」
「宜しければ」
朝鮮の者はさらに言った。
「書もです」
「それもか」
「送らせて頂きますが」
「では頼む」
将軍は渡りに船という顔で応えた。
「その様にな」
「それでは」
朝鮮の者も頷いてだった。
朝鮮から書を送ってもらいそうしてだった。
将軍はその書を読みかつそこから剣術を学び。
兵達にも教え書としても残した、全てが整ってから皇帝に全てを話した。すると皇帝は驚きを隠せない顔で言った。
「まさかな」
「はい、剣術がです」
「我が国でなくなっていたとはな」
「私も驚きました」
「剣は武器としてはな」
「至極当たり前のものですね」
「その代名詞の一つだ」
そこまでのものだというのだ。
「それでな」
「それで、ですね」
「そしてだ」
それにというのだ。
「あまりにもありきたりでな」
「その使い方もまた」
「普通にあると思っていた」
「ですがそれがです」
「我が国では長く使っていなかった」
武器の代名詞の一つだがだ。
「長い間な」
「左様でした」
「それこそ王朝が変わる前からな」
「そうでしたね」
「朕もそのことを失念していた」
そしてというのだ。
「全くな」
「そうでしたか」
「朝鮮に書がありよかった」
「若しなければ」
「どうなっていたか、武器の代名詞でもな」
「長く使っていない場合もあり」
皇帝はさらに言った。
「そうであるならな」
「使い方が忘れられていて」
「そしてだな」
「書にも残っていません」
「そうだな、そのことがわかった」
皇帝の声は強く確かなものだった。
「まことにな」
「ではこのことを覚えておこう」
「教訓とすべきですね」
「全くだ、ではな」
「はい、剣術については」
「その様になったな」
「左様であります」
将軍は皇帝に深々と礼をして応えた、そうしてだった。
明軍において剣術を教えていった、忘れられていてそれで新たに学ばれた剣術は以後も明に伝えられた、もう二度と忘れられない様に心して。
失われた術 完
2021・7・13
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ