第一章
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死んでいない
フランスにある六十を過ぎた宝石商が来た、彼はフランスにいたが長い間世界を巡っていたのである。
名前をジャン=バティスト=ダヴェルニエという。彼はフランスに戻ると周囲に得意満面の顔で話した。
「わしは億万長者になれるぞ」
「世界を巡ってですか」
「それでお宝を手に入れたからですか」
「それで、ですか」
「そうだ、とんでもないダイヤを買い取ったんだ」
そうしたというのだ。
「それを持って来たんだ」
「ダイヤですか」
「それを手に入れてですか」
「売るおつもりですか」
「そうだ、何とおよそ百十カラットだ」
大きさの話もした。
「何でもハイデラバードから掘り出されたそうだが」
「インドですか」
「そこで掘り出されたものですか」
「そうなんですね」
「そう、それをわしが買い取って持ってきた。問題は誰に売るかだが」
ダヴェルニエはここで考える顔になった。
「さて、どうしたものか」
「そんなに凄いダイヤだったら貴族の方かですね」
「若しくは王族の方に売られては」
「そこまでなら」
「どうでしょうか」
「そうだな」
ダヴェルニエは周りの言葉に頷いた、そうしてだった。
ダイヤのことをしきりに喧伝した、すると並の王族や貴族どころではない人物の耳に入り呼び出された。
その者の名はルイ十四世といった、他ならぬフランス王である彼は自らダヴェルニエを呼び出してダイヤを持ってこさせた。
そのダイヤを見てだ、王は微笑んで言った。
「これは素晴らしい」
「あの、王がですか」
さしものダヴェルニエも王に声をかけられて驚いていた、そのうえで言うのだった。
「このダイヤを」
「うむ、買わせてもらいたい」
王はそのブルーダイヤを見つつ答えた。
「そうさせてもらおう」
「左様ですか」
「そうだ、そしてその買い取る値段だが」
王はその値段を言った、すると。
ダヴェルニエは仰天した、それで王に問い返した。
「王よ、宜しいでしょうか」
「どうした」
「本当にその額で宜しいのでしょうか」
想像もしていなかった額なので王に確認したのだ。
「それで」
「安いか」
「いえ、高過ぎるかと」
「ははは、このダイヤにはそれだけの価値があるということだ」
王は玉座から宝石商に笑って述べた。
「これは当然の額だ。そなたも世界を巡って手に入れたのだろう」
「はい、インドで買い取りました」
「わざわざ欧州の外に出て危険な船旅をしてまで手に入れたものだ」
しかも金を出してというのだ。
「それならだ」
「当然の額ですか」
「そなたも苦労したからな、ではな」
「その額で」
「買い取らせてもらう」
太陽王とも自称する王はこう言ってだった。
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