第一章
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厳しい家から
鮎川楓風は二十五歳になる、幼稚園から大学まで出身の京都の一貫の学校に通い由緒あると言っていい家で育ってきた。
清楚なさらりとした黒髪を腰まで伸ばし切れ長の目と小さな赤の唇を持つ面長で顎の先が尖った細面で背は一六二位で手足は長くすらりとしたスタイルだ、今は就職してそのうえで真面目に働いているが。
両親からだ、ある日家でこう言われた。家は大きな和風の屋敷であり楓風も両親も服は落ち着いた気品のあるものだ。
その屋敷の居間で両親は自分達の前に正座している娘に話した。
「今度お見合いをしてもらう」
「それでいいわね」
「お見合いですか」
楓風は両親の言葉に頷いた。
「では」
「相手は神戸の人でな」
「随分と真面目な人だそうよ」
「その人とお見合いしてもらうが」
「楓風さんから異論はあるかしら」
「ありません」
楓風は素直に答えた、幼い頃から厳格な教育の中にあって両親の言うことに逆らわなかった彼女はこう答えた。
「それでは」
「うむ、ではな」
「お見合い宜しくね」
「それで籍を入れることになれば」
「お二人で幸せにね」
「お家はお兄様が継がれるので」
兄の信一郎がだ、妹には何も言わないが両親以上に生真面目な性格でかつ公平で思いやりもある人物だ。ただし実は酒と甘いものが好きでどちらも飲み食いをはじめると止まらないという困った癖もある。
「それで私はですね」
「籍を入れたらな」
「そちらで暮らしてね」
「わかりました」
楓風は両親の言葉に頷いた、そしてだった。
お見合いをした、その相手は鈴木貴也という黒髪の上だけ伸ばしていて左右を刈っている面長の青年だった。
眉は太く短く奥二重の目は澄んでいてきりっとしている。薄めの唇は一文字で一七九程の背は引き締まっている。
その彼と料亭でお見合いをした、彼は話すと穏やかで気さくな青年だった。働いているのは神戸の八条出版であった。
「出版社ですか」
「とはいっても編集ではなくて経理なので」
貴也は笑顔で話した。
「極端に忙しくはないです」
「雑誌の編集部はかなりのものらしいですね」
「我が社はホワイトを心掛けているのでかなりいいですが」
「おおむねですね」
「不眠不休なんです」
そこまでの激務だというのだ。
「漫画家さんの編集者さんにもなりますと」
「そうですか」
「もうそちらはです」
「そんな風で」
「かなりですが」
それでもとだ、貴也は話した。
「僕はまだ。それに性格的にも」
「そちらもですか」
「あまりこだわらないそれで気楽な性格で」
それでというのだ。
「編集には合わないと言われています」
「本当に編集さんは大変なんですね」
「そうなんです。そして
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