第一章
死とは何か?
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島下は両手を絡ませて合わせたりしながら話した。
「ま、まあ、ポジティブに考えましょうか。ここで、あっ、俺死んじゃった。って、暗くなることは誰でもできますよ。でも、それじゃあ、つまんないじゃない。野暮でしょう。うえええん。悲しい。って、泣いたところでね。
そもそも、悲しいってのは何かっていうと、死ぬかもしれないという恐怖があって悲しいわけでしょ。生きるためには、人間、何かしらの希望と言いますかね。心の中に、弁慶の七つ道具みたいな、生きるための武器みたいなもの、そう、生きる支えがあるわけだ。生きている意味みたいな。その大切な一部がなくなるってことが、悲しいってことの定義でしょ。
ある人が死んで悲しいってことは、その人の死は、悲しむ人にとっては、生きる理由に近づけば、近づくほど悲しいわけで。かけがえのない存在であればあるほど、悲しいわけだ。
でもね。今、この私がいる地点ってのはね。これ、死、そのものなんですよ。それが、今までのケースとはちょっと違ってて、死んじゃった人間ってのは、悲しみようがないでしょ。悲しみが、死への恐怖という定義でもってするなら、死という地点に今居るんだから、これ以上、死にようがないからね。
いや待てよ。消滅への恐怖というのが、今度、出て来るなあ。死んだ自分からしてみれば、その先があるわけで。その先は消滅か。でもこれもさ。今、死んでいる状態を手放したくないから、消滅が怖いんだけど、流石に私もいつまで経っても死んだままでいたくないわけだ。そうか。そう考えると、私は死んでいるというか、幽霊という状態なんだな。これは。つまり、生きることへの究極のモラトリアムだね」
「さっきから、お話が大変、ややこしいことになっているんですが、やっぱり、昼の光って、幽霊には禁物なんですかね」
「あ、そうそう。あんまり光の中にいたくないね」
「そうですか」
というと三吉はカーテンを閉めるのだった。とは言っても、雨が降るかというほどの曇りなので、それほど明るくもなかったが、蛍光灯の光は大丈夫ならしい。
「まあ、哲学するのも良いんですが、何で死んでしまったのかを考えるのが一番、成仏への近道なんじゃないですかね?この場合」
「そうだね。私もいつまでも幽霊でいるわけにはいかないからね。うん?でも、待てよ。いつまでも幽霊でいてもいいのか。だって、誰に気兼ねするわけでもないからね。こういう場合、信仰がないと、ややこしいことになって来るね」
「そうですね。信仰がちゃんとあったら、真っ直ぐに成仏してますからね」
「今、成仏と言ったけど、じゃあ、キリスト教を信仰している幽霊があったとするよ。これが成仏しちゃ、ちょっと、違う話になりゃしないかね?」
「それは違いますね。昇天なのかな?キリスト教の人たちは死んだらどう
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