第一部 1977年
霈
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きて、《男狩り》を始めた」
男は、白磁の皿に手を伸ばして、大きいクッキーを掴み取る
「青年団は俺の島だ。島に黙って入ってきて食い荒らされては困る。
それ故、人民の軍隊である人民軍の将校に、《陳情》しているのだよ」
高級幹部特有の言い回しに、少将の目が鋭くなる
今の一言は、政治的に、危うい発言だ
「それは、どのような立場でだ」
クッキーを弄びながら、男は答えた
顔は、背けたままであった
「党中央委員の意見としてだ」
少将は、火のついたタバコを灰皿にそっと置いた
その態度から、彼は少将が静かに怒っているのを悟った
「党中央委員会の意見としてか」
クッキーを割りながら、なおも続ける
「それは君の判断に任せる」
少将は、両肘を机の上に突き出すように座って、答える
机の上に置いた両手が握りしめられていく
「脅しかね」
灰皿の吸い殻へ、種火が移り、燻り続ける
部屋は、天井の方に煙で空気が白く濁ったようになっている
「要望だよ」
そういうと男は、クッキーを食べ始めた
食べ終わると、こちらを見ながら話し始めた
「つまり、君達がそれなりの結果を示さないと、あの茶坊主共にこの国は滅茶苦茶にされると言う事だよ」
ベルンハルトは腕時計を見た
時刻は午後10時半
せっかくの帰国だ……
そう悩んでいると、男が声を掛けた
「妹や、愛する《妻》に逢いたかろう。今夜はお開きだ
明日、親父さんを連れてきなさい。如何しても外せない話が有るからと伝えて置いてくれ」
彼は、その一言を聞いて一瞬戸惑ったが、理解した
《親父さん》とは精神病院に幽閉されている実父ヨゼフ・ベルンハルトではなく、将来の岳父、アーベル・ブレーメであることを
その様な思いを巡らせていると、少将が右肩に手を置いた
「一旦帰ろうではないか」
彼は立ち上がり、少将と共に敬礼
ドアを開けると、軍帽を被って屋敷を後にした
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