第一部 1977年
霈
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
缶と、急須に茶碗が盆に載せられ運ばれる
「お待たせしたな、フランスの茶しかなかったんだけど、良いかね」
青年は驚いた、フランスのフォション(FAUCHON)
缶を裏返してみると、先頃より手に入りにくいセイロン(スリランカの雅称)茶葉であった
続いて運ばれてきた、白磁の皿には、直径15センチもあろうかというクッキーが10枚ほど並んでいた
「なんでもベルンハルト君、西側の茶葉が好きだそうだね。君の好みに合うかは知らんが、味わってくれ」
彼は驚いた。
自分は、すでに目の前の男にとっては、丸裸寸前の状態であることに。
「話を戻そう。すでに諸君も報道で知っているとは思うが、先日、中共がハイヴを単独攻略をした。
我が国も様々な筋からの情報でもそれが裏付けられた
なんでも超大型の戦術機による空爆で、ハイヴを粉砕したらしい事まで分かった」
壮年の少将が口を開いた
「超大型ですか」
彼に主人が写真を差し出した
「この写真を見たまえ」
撮影日時は不明ではあるが、横倒しの状態でコンテナ船に乗る戦術機の姿が映っていた
縮尺から考えると50メートル近い巨大な全長。
武装は見えるところにはないが、恐らく別積みしてあるのだろう
「こんな物を、何時の間に……、
この混乱の前に、10年に及ぶ文革で数千万が被害にあったと聞き及んでいます。
彼らに、その様な工業力があったとは、思えませんが……」
屋敷の主人は、脇からフランスたばこを出す
右手で、封を切り、箱から一本取りだす
縦型のオイルライター、恐らくオーストリア製のライターであろうものを取り出し、火を点ける
ゆっくりと吸い始め、そして語り始めた
「実は、未確認の情報だが、西側の新兵器らしい。
最終的に、天津港から、日本の神戸港に運ばれた」
ベルンハルトは、驚いたような声で尋ねた
「じゃあ、支那は独力ではなく日本に助力を求めたというのですか!
今頃になって他国に援軍を求めるなど虫が良すぎではありませんか。
その様な我田引水は、許されるものではありません」
主人は彼を宥める
「まあ、落ち着き給え」
彼に、紙巻きたばこの箱を、右手で差し出す
ジダン(Gitanes)の文字が見え、フランスの有名な黒タバコであることを理解した
このような物を自在に手に入れる立場であること、自分の地位の高さを見せつけるためであろう
それとなく、目前の男は、彼に説明しているのだ
「君、たばこは吸うか」
彼は右手で遮った
「自分は吸いません。それに……」
たばこの箱を、少将の方へ向けた
少将は彼の右手から、自分の右手に、タバコの箱を受け取る
「宇宙飛行士になりたいんだろう。
まだ20代じゃないか、夢をあきらめるは、早い。
たしかに体が資本だ。だからこそ君の様な男に、この動乱を生き
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ