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イベリス
第三十五話 テストの結果を受けてその三

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「お母さんと咲はお酒出して」
「飲みながらなのね」
「お話聞いてあげましょう」
「お父さんはお水なの」
「経口補給水あるから」
 水といってもというのだ。
「それを出すわ」
「何であのお水なの?」
「あのおお水はお酒飲んだ時にかなりいいのよ」
「そうなの」
「酔いが醒めるし二日酔いにもいいから」
 だからだというのだ。
「それでよ」
「経口補給水なの」
「あれ出すわ」
「そうしてなのね」
「ええ、お話聞きましょう。ビール出すわ」
 母は自分達が飲む酒の話もしてだった。
 家族三人でテーブルに座ってそうして向かい合って話をした、父は経口補給水を飲みつつ自分の妻と娘に話した。
「東京にいたらずっと埼玉は田舎だったんだ」
「そう思っていたの」
「その辺りの草でも食べさせとけと言う風なな」
 ビールを柿の種と共に楽しむ娘に話した。
「そうだったんだ」
「そうだったの」
「それでもう埼玉にはな」
「行かなかったのね」
「お父さんも言ったことはある」
 その経験はあるというのだ。
「日本シリーズの時だ」
「確かヤクルト対西武よね」
 一九九七年の日本シリーズである、ヤクルト有利と言われていたが事実終始ヤクルトが西武を圧倒して日本一を決めている。
「あの時よね」
「あの時は行ったがな」
「それでどうだったの?」
「駄目だ、東京と全然違っていた」
 父は娘にこう返した。
「田舎だった」
「何処が田舎?」
 咲は自分が知っている埼玉の風景から父に返した。
「一体」
「だからお父さん生まれも育ちも東京よ」
 母がここで言ってきた。
「お母さんもだけれど」
「代々なのよね」
「大学は神戸だったけれどね」
 それでもというのだ。
「高校までそれで就職してからもね」
「ずっと東京だったから」
「江戸っ子とは言わないけれど」
 江戸っ子というのは東京にいるからではないらしい、葛飾等に住む者を言うふしがあるというのが咲の母の考えだ。
「もう何代もね」
「東京にいるから」
「それで埼玉はね」
「田舎って意識があるの」
「お母さん達の世代だともう埼玉は田舎じゃなかったわ」
「そうよね」
「人口も多いし」
 何百万と擁している、さいたま市は政令指定都市でもある。
「お店もビルも多い」
「都会よね」
「そうなんだけれどね」
「お父さんの中ではなの」
「何でか他の県のことは言わないの」
 そうだというのだ。
「千葉県とか群馬県とかね」
「そういえばそうね」
 咲もそれはと頷いた。
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